韓国側の声明など


2019/10/10【韓国知識人による声明】

東アジアにおける平和の進展のために

日本安倍政権の朝鮮半島政策の転換が必要である

10/10 (韓国)東アジア平和会議・対話文化アカデミー・主権者全国会議は、記者会見を開き、次の声明を発表しました。


東アジアにおける平和の進展のために

日本安倍政権の朝鮮半島政策の転換が必要である

 

  

 

転換って

 

解放と分断に続いて朝鮮戦争を経験した後、韓国は1965年に韓日国交を樹立した。紆余曲折がなくはなかったが、韓国の民主化運動の成功や脱冷戦時代の到来に支えられ、日本の政界や市民社会は韓国社会の変化を認める認識の転換を示した。韓国の市民社会と政界から浮上した、過去の日帝植民地統治に対する指摘や謝罪要求に対し、日本の市民社会と政界からも次第に応答がなされて来た。中国の「大国屈起」から北朝鮮の核武装までが続く趨勢の中、安倍政権が平和憲法を廃棄し「戦争のできる国、日本」政策を強行しようとしていることに対し、平和体制を守らんとした明仁上皇の努力は高く評価されるべきであろう。

来たる10月22日、徳仁新天皇の令和時代が開かれる。韓国の人々は、平成時代同様に令和の時代にも、東アジアの平和を守るための努力が持続されるよう期待している。2020年には、世界の祭典である東京夏季オリンピックとパラリンピックが開催される。日本が隣国との間で、葛藤や敵対ではなく、和解と平和をひらいていくことを切に希望する。

1965年の国交正常化以来、最悪の状態に転落してしまった韓日関係と東アジアの平和を前進させるために、私たちは日本の安倍政権に対し、次のように求める。

 

1.安倍政権は、この間の朝鮮半島敵視政策を転換するべきである。不当な貿易規制などを撤廃するべきである。

2.「1965年体制」の不安定性を認め、その是正に取り組むべきである。

3.安倍政権は、日本が核兵器による最初かつ最大の被害者であったという歴史的事実を厳粛に受け止め、平和憲法体制を守り抜くべきである。韓国人も、日本人に次ぐ、核兵器による第二の被害者であった事実も想起させたいものである。

4.日本が、韓国と共に朝鮮民主主義人民共和国の非核化を牽引し、更には、東アジアを非核兵器地帯につくって行く道のりで、韓国の誠実な同伴者になってくれるよう期待する。

5.日本が、朝鮮民主主義人民共和国との長きにわたる異常な関係を最終的に清算することで、朝鮮半島と日本が新しい百年をともに切りひらいていくことを期待する。

 

いま、東アジアは転換の入り口に立たされている。2018年に韓国で起こった二つの事件が、転換の時代を象徴している。一つは、朝鮮半島の平和-非核化宣言であり、いま一つは、韓国大法院による強制動員賠償判決である。前者は、戦争の時代を終息させる過程の始まり、後者は、植民の時代を終える過程の始まりともいえよう。

3・1運動100年を迎えた2019年、私たちは、朝鮮半島の中に流れてきた時が植民と戦争にまみれていたことに対する悔恨を晴らし、来たる時を平和と協力で満たして行きたいと願う。それは、朝鮮半島の平和を未完の課題として残した停戦と、植民地の克服を未処理の課題として隠蔽した冷戦を、 同時に克服することでもある。絶体絶命であった2017年の戦争の危機は、朝鮮半島の停戦と東アジアでの冷戦が折り重なり合って生じた結果といえた。それを克服する過程で「1965年体制」が浮き彫りになったことは、東アジアの歴史の自然な帰結であった。

 

 

 

安倍政権は朝鮮半島敵視政策を転換するべきである

 

「1965年体制」に対する日本安倍政権の一方的な解釈が、歴史の流れに背を向け、むしろ東アジアの平和を脅かすことになってはいないかを省察するよう求める。取り分け、安倍政権が7月初めに韓国への輸出規制措置を発動し、8月初めにホワイト国家リストから韓国を排除したことが、2018年に始まった朝鮮半島の平和-非核化を深刻に脅かしているという事実を指摘したい。また、安倍政権は、戦略物資が北朝鮮に流出された可能性を一連の措置の理由として言及したかと思えば、2015年の「慰安婦」合意や、強制動員関連の韓国大法院判決に対する不満をもあらわにした。どれが本当の理由なのか。

安倍首相にとっては、内閣総理大臣として、植民地支配の直接的な被害者たちに謝罪を表明することこそが、合意の履行のための最小限の前提ではないか。ところが、安倍首相は、韓国国民に対する誠意ある謝罪を拒否し、日本の誠意を促す韓国の要求に対しては、それらをすべて「合意の違反」だと決めつけている。

 

 

 

韓国大法院の判決は正当である

 

強制動員に関する韓国大法院の判決は、大韓民国憲法の精神と、1965年の韓日基本条約および請求権協定に対する大韓民国政府の公式解釈に従ったものである。すなわち、韓国の憲法の前文は、大韓民国が「3・1運動によって建立された大韓民国臨時政府の法統」に立脚していると明言している。したがって、韓国大法院が、1910年の「韓国併合条約」に依拠した日本の植民地支配を不法と判決したのは、当然のことである。韓国政府は、「韓国併合条約」が1910年に「すでに」無効であったという事実を、1965年当時の韓日基本条約で「すでに」公式の解釈として位置づけている。

 

韓国併合条約が当初から無効であったという解釈は、韓日会談当時起こった、協定の屈辱性に対する巨大な全国民的抵抗の成果であった [1]。

 

このような歴史学界の成果に基づき、2010年5月、「韓日両国知識人共同声明書」は、「併合の歴史について今日明らかにされた事実と歪みなき認識に立って振り返れば、もはや日本側の解釈を維持することはできない」と確認しており、「併合条約は元来不義不当なものであったという意味において、当初から『null and void』であるとする韓国側の解釈が共通に受け入れられるべきである」と宣言した。このような認識を受け入れ、2010年8月10日、閣議決定を経て発表された菅直人首相の「韓日併合100年首相談話」は、植民地支配が「政治的・軍事的背景の下、韓国の人々の意に反して行われた」と、植民地支配の強制性を認めるに至った。

 

一方、請求権協定は、韓日間の財産および請求権について政治的妥結をなしたものに過ぎず、不法な植民地支配に対する賠償は含まれていないというのが、私たちの一貫した立場であった。以降も、このような原則的な立場が変わったことはなかった。したがって、昨年の大法院判決は、韓国憲法の基本精神はもちろんのこと、韓日間の条約および協定に対する公式解釈に基づいたものであり、いかなる点でも国際法違反とは言えない。 更に、韓国人被爆者問題、サハリン同胞の帰国問題、そして日本軍「慰安婦」問題など、請求権協定に含まれていなかった問題について、日本が政府予算措置をもって被害者に対する支援を実施したという事実自体が、請求権協定ですべての問題が解決されたのではないという事実を日本自ら認めたことを示している。

 

 

 

植民地支配責任についての国際社会の認識も進歩している

 

2001年の「ダーバン宣言」で、国際社会は、植民地主義が残した人種差別など過去の被害はもちろん、現在までも継続される被害は、時間を遡及して非難される事柄として、再発の防止がなされなければならないことであると確認した。しかし、私たちが日本の植民地から解放された1945年の時点では、植民地支配に対する国際社会の認識はまだ浅はかな状態であった。第2次世界大戦の敗戦国イタリアの場合、連合国との平和条約において植民地への賠償問題は見過ごされ、そのあり方が日本と連合国の間に締結されたサンフランシスコ平和条約にも貫かれ、日本に対しても植民地の賠償については言及のないまま処理されてしまった。このことが1965年の韓日基本条約の背景となっていたのである。しかし、当のイタリアは、2008年にリビアとの間で、友好、パートナーシップおよび協力に関する条約を締結する中で、植民地支配に対する謝罪と反省を表明し、そのような過去を終結させるため、50億ドルにのぼる投資を約束することで賠償を実施するに至った[2]。その他の多くの要求に直面することになり、欧州議会は2019年3月26日、決議を通じて、欧州の植民地主義によってアフリカで引き起こされた、過去から今でも継続されている不正義と人道に対する犯罪の歴史を、欧州連合の機構や会員国が公式に認め記念するよう促した経緯がある。このように、国際社会における植民地支配責任に対する認識は、大きな進展を遂げている。昨年の韓国大法院の判決は、このような国際社会の植民地支配責任に対する認識の発展とも、軌を一にするものである。

 

 

 

安倍政権は「際法違反」という非難を中断するべきである

 

にもかかわらず、安倍政権は韓国の大法院の判決に対し、一方的に「国際法違反」と非難し、韓国政府に「是正」を求めている。日本政府が提起している問題はただ一つ、大法院の判決が請求権協定2条に違反しているということである。

 

日本は昨年10月30日、大法院の判決が出るやいなや、直ちに外務大臣談話を発表し、韓国が大法院判決によって国際法違反の状態にあると決めつけた。談話は、請求権協定により、日本が韓国に対し、無償で3億ドル、有償2億ドルなど、計5億ドルの資金協力を約束した(1条)と同時に、請求権に関する問題が完全かつ最終的に解決され、いかなる主張もできない(2条)ことになっているにもかかわらず韓国大法院が損害賠償の支払いを命じたのは請求権協定2条に違反するものであり、したがって、韓国政府が国際法違反の状態を「是正」するべく、適切な措置を講じるよう要求した。

 

しかし、日本のこのような主張は論理的矛盾を抱えている。まず、韓国の大法院の判決は、強制動員に対する損害賠償の支払いを命じているため、賠償請求権は請求権協定の対象にはなり得ない。請求権協定は、財産上・民事上の権利義務関係を政治的に解決したものに過ぎず、したがって不法な植民地支配の下で被った基本的人権の侵害に対する賠償問題は、協定と無関係だと見るべきである。しかも、談話で日本自らも指摘しているように、日本が韓国に約束したことは資金協力であるうえ、その法的性格はまったく言及されていない。また、資金協力を約束したという事実と請求権問題が解決されたという事実の関係も曖昧である。このことは、韓国の大法院がその問題点をすでに指摘しているところでもある[3]。

 

 

 

韓日「1965年体制」の克服が課題である

 

問題は韓日間の「1965年体制」である。「1965年体制」とは、韓日基本条約と請求権協定に対する両国の解釈のくい違いのため、法的基礎が不安定な状態で展開されてきた韓日関係の現実を指す。2018年の大法院判決は、「1965年体制」の不安定性を浮き彫りにしたものであり、今やこの不安定性を根本的に取り除かなければならない状態にあるということを確認させた。しかしながら、「1965年体制」の持つ不安定性を取り除くということが、韓日基本条約や請求権協定を否定し、新たな条約や協定に取り替えるべきだということを意味するものではない。

 

1965年体制が限界をはらんでいたことは明らかであるが、これを基に発展してきた歴史があるのも事実であり、1965年体制の限界を克服するために努力してきた歴史があるということも事実である。その量的成長は眼を見張るようなものであった[4]。

質的成長も注目に値する段階に達している。2002年の日韓共同ワールドカップが成功裏に開催されたことで、そのことを確認することができた。さらに、2011年には、3・11東日本大震災直後に韓国国民が日本国民に声援を送っており、解放70周年の2015年には、韓国の各界長老たちが日本の平和憲法9条を2015年度ノーベル平和賞に推薦する署名運動に取り組むなど、韓国市民社会が日本の市民社会に送る信頼と尊重が確認されるに至った。

 

 

 

2010年の菅直人首相談話が到達点であり、新たな出発点である

 

これらのことは、2010年の菅直人首相談話で確認されたような日本の歴史認識の進展に負うところが大きかった。日本における歴史認識の進展は、民主化の過程で成長した韓国の市民社会が日本軍「慰安婦」問題を提起し始めたことに刺激された面もあり得よう。韓国市民社会の力量が韓国政府を突き動かし、韓国政府の問題提起に日本の市民社会や政府が応じながら、漸進的に歴史認識が進歩したのである。1993年の河野談話、1995年の村山談話、1998年、金大中-小渕恵三共同宣言が、そのような成果であった。その基礎の上に、2010年の菅直人談話が発表されている。今では、菅直人談話の歴史認識を韓日が共有することが残されている[5]。

 

私たちは、韓国・中国・日本が、東アジアの平和体制へと進むために、新しい令和の時代が開かれ、日本安倍政権の朝鮮半島政策が転換されることを期待する。日本において、安倍政権の政策に異議を唱え、韓国との対話に乗り出すよう求める声明が発せられたことは、日本社会の良識と健康性を示したものと言えよう。

 

  2019年10月10日

  

東アジア平和会議  対話文化アカデミー  主権者全国会議 

 

 

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東アジア平和会議・対話文化アカデミー・主権者全国会議 10月10日声明文 

 

署名賛同者105

 

 

▲元公職者: 李洪九(元国務総理)、高建(元国務総理)、鄭雲燦(元国務総理)、金元基(元国会議長)、林采正(元国会議長)、韓完相(元副総理)、李鍾贊(元国家情報院長、友堂李会栄先生奨学財団理事長)、韓承憲(元監査院長)、李御寧(元文化部長官)、金鎭炫(元科学技術部長官)、金成勳(元農林部長官)、金泳鎬(元産業資源部長官)、尹汝雋(元環境部長官)、申楽均(元文化観光部長官)、金聖在(元文化観光部長官)、劉震龍(元文化体育観光部長官)、鄭鉉栢(元女性家族部長官)、 兪弘濬(元文化財庁長)、金道鉉(元文化体育部次官)

 

▲元大使: 崔相龍(元駐日本国大使)、成稔(元駐教皇庁大使)

 

▲元国会議員: 権永吉(元民主労働党代表)、李佑宰(梅軒・尹奉吉月進会代表)、李昌馥(6・15共同宣言実践南側委員会常任代表)、柳在乾(如海と共に理事長)、 朴錫武(茶山研究所理事長)、李富榮(夢陽呂運亨先生記念事業会理事長)

 

▲文化芸術家: 申庚林(詩人)、金禹昌(文学評論家)、白楽晴(文学評論家、創作と批評元編集人)、孫淑(演劇人、芸術の殿堂理事長)、金炳翼(文学評論家、文学と知性元代表)、廉武雄(文学評論家)、黃晳暎(作家)、李春羲(国楽人、無形文化財57号)、李愛珠(舞踊家、京畿道文化殿堂理事長)、金正憲(画家、韓国文化芸術委員会元委員長)、シム・ジョンス(심정수,彫刻家)

 

▲宗教者: 姜宇一(主教、カトリック済州教区長)、咸世雄(神父、主権者全国会議常任顧問)、朴昌一(神父、イエス聖心傳敎修道会)、金永柱(牧師、キリスト教社会問題研究院院長)、李海東(牧師、主権者全国会議常任顧問)、安載雄(牧師、元韓国YMCA全国連盟理事長)、朴宗和(牧師、国民文化財団理事長)、蔡洙一(牧師、京東教会担任)、李鴻政(牧師、韓国キリスト教教会協議会総務)、道法(僧侶、仏教曹渓宗実相寺会主)、 鄭仁誠(教務、圓仏教平壌教区長)、朴南守(元天道教教領)

 

▲学界: 池明観(翰林大学碩座教授)、張會翼(ソウル大学名誉教授)、徐洸善(梨花女子大学名誉教授)、姜萬吉(高麗大学名誉教授)、姜貞埰(全南大学元総長)、朴賛石(慶北大学元総長)、辛仁羚(梨花女子大学元総長)、尹慶老(漢城大学元総長)、朴孟洙(圓光大学総長)、李萬烈(淑明女子大学名誉教授、元国史編纂委員長)、李泰鎭(ソウル大学名誉教授、元国史編纂委員長)、趙昌鉉(漢陽大学碩座教授)、キム・ギョンジェ(김경재、韓神大学名誉教授)、金容福(韓神大学碩座教授)、徐鎭英(高麗大学名誉教授)、具汏列(梨花女子大名誉教授)、金淑子(祥明大学名誉教授)、 金珉煥(高麗大学名誉教授)、コ・チョルファン(고철환、ソウル大学名誉教授)、尹泳五(国民大学名誉教授)、李鍾旿(明知大学名誉教授、元大統領諮問政策企画委員長)、 李時載(カトリック大学名誉教授)、黄漢植(釜山大学名誉教授)、林玄鎭 (ソウル大学名誉教授)、金照年(韓南大学名誉教授)、曹恩(東国大学名誉教授)、イ・グァンテク(이광택、国民大学元教授)、朴贊郁(ソウル大学教授)、朴明林(延世大学教授、金大中図書館館長)、南基正(ソウル大学教授、日本研究所研究部長)

 

▲言論人:  任在慶(ハンギョレ新聞元副社長)、愼洪範(朝鮮闘争委元委員長)、劉承三(元ソウル新聞社長)、権寧彬(元中央日報社長)、金鍾哲(緑色評論発行人)

 

▲市民社会:  池龍澤(仁川セオル文化財団理事長)、朴庚緒(大韓赤十字社会長)、李三悅(対話文化アカデミー理事長)、李正子(女性政治フォーラム代表)、鄭聖憲(DMZ平和生命の園理事長)、キム・ウォンホ(김원호、シアル財団理事長)、李賢淑(女性平和外交フォーラム名誉会長)、李秀浩(主権者全国会議常任代表、全泰壹財団理事長)、崔英姫(社団法人タクティンネイル理事長)、張任源(民主化のための全国教授協議会元議長)、趙誠宇(キョレハナ理事長)、イ・ヘギョン(이혜경、女性文化芸術企画理事長)、姜大仁(ペゴッ-風と水理事長)、柳鍾烈(興士団理事長)、鄭康子(参与連帯共同代表)、梁吉承(6月民主フォーラム代表)、李承煥(市民平和フォーラム共同代表)、申弼均(韓国社会投資支援財団理事長)、尹貞淑(緑色連合共同代表)、ムン・グクチュ(문국주、主権者全国会議執行委員長) 以上

 

 

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【注釈】

[] 19042月の日露戦争開始以後、領土使用権、外交保護権、内政干渉権などを次々と要求した協定または条約が、国家元首(皇帝)の批准書を備えていた場合は一件もなかったばかりでなく、1905年の「保護条約」の韓国語本は日本公使館が任意で作成したため、効力を持ち得ないものであった。19108月に強いられた「韓国併合条約」は、韓日両国語本が材質から書体に至るまで同一であったことが確認されており、韓国語の文章もまた、統監府の官吏によって作成されたことが確認されている。19194月に樹立された大韓民国臨時政府は、米国をはじめ西欧列強を相手に請願外交を展開して、韓国併合が無効であると力説した。このような努力は国際連盟から注目される事案となり、1935年に完成した「条約法に関する報告」では、1905年の「保護条約」が、効力を発し得ない不法条約であると判定された。この報告書は、1963年、国際連合の国際法委員会でも再度確認されていることからも、1965年に締結された日韓基本条約での韓国側の主張は、「すでに」その時点で、国際的な支持の根拠を持っていたのである。

[] その他、英国のケニアに対する植民地支配、オランダによるインドネシア植民地支配、ドイツによるナミビア植民地支配、フランスによるアルジェリア植民支配の下で犯された、様々な反人道的犯罪に対する謝罪と賠償のための努力が傾けられており、スペインの征服に対するメキシコからの謝罪要求、カリブ海諸国の旧宗主国に対する謝罪と賠償要求などが続いている。

[] 日本が、韓大法院が命じた賠償請求が請求協定2違反だと主張するのであれば、賠償問題が2で解決されたと規定した問題に含まれるのかを明らかにしなければならない。もし請求協定を通じて賠償問題を解決したのであるならば、賠償の前提となる植民地支配の不法性を認めたのかどうかを確認しなければならないだろう。

[] 1965年の交正常化以、半世紀を経る間に韓日輸出は4,500万ドルから397億ドルへと880倍、日輸入は17,000万ドルから683億ドルへと400倍、日本の韓直接投資は50万ドルから454,000万ドルへと9,080倍にえた。人的交流も目を見張る成長を遂げ、昨年、訪日韓人は754万人、訪韓日本人は295万人となり、1,000万人時代を迎えた。これは年間一万人であった1965年の交正常化時の民間交流水準の1,000倍規模である。

[] しかしながら、その過程は容易ではないものと予想される。14年にわたる韓日協定の交にもかかわらず、1965年の約や協定でも植民地支配の不法性を最終的に確認することはできなかったのであり、以降50年余りの史が蓄積される過程でも、その確認までには到達できなかった。大法院の判決後も、懸案を妥結するべく韓日間のなチャンネルを通じた意見交換があった。ただ、大法院判決について、これを「是正」せよという日本政府の要請は、三分立の原則を重に受け止める韓政府としては受け入れられないものである。先の619日、韓企業と日本企業が財源を用意し、制動員被害者を救する方策を提示して問題解決の糸口をつかむための努力をけたにも、安倍政は輸出規制の化という一方的な措置を取ることで、1998年の韓日共同宣言に立脚して展させてきた未志向の韓日係を最態へと化させた。

 

 

 


【2019・8・15】  74周年特別声明

韓日関係の危機を乗り越え東アジアの平和へ!


韓国の「東アジア平和会議」(署名者67名)による声明の日本語訳です。署名者のお名前は、声明の下段をご覧ください。

                         

    韓日関係の危機を乗り越え東アジアの平和へ!

 世界は重篤な病に陥っている。核戦争を防ぐ要となり、大陸間中距離核ミサイルに歯止めをかけてきた、弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)と中距離核戦力全廃条約(INF条約)がその力を失ってしまった。人類だけでなく地球そのものの終末を招くまいと世界の人びとの願いが込められていたパリ協定も、米国の脱退により力を失った。自由で公正な貿易秩序を守る主役であるべき強大国が、自らの勝手な理屈を実現するために、この秩序をぶち壊しにしている。世界のあちこちで強大国のナショナリズムの台頭により民主主義が危機に瀕している。

 

   三・一運動と大韓民国臨時政府樹立から一〇〇周年を迎えた今年、韓国と日本は1965年の韓日国交正常化以来、事実上最悪の関係となっている。安倍政権が韓国への貿易報復を主導し、平和憲法廃棄、そして再武装を公言していることで、東アジアの平和は今深刻に脅かされている。

 東アジア平和会議は光復解放70周年を迎えた2015年に、朝鮮半島の平和と日本の平和憲法9条擁護のために、韓国と日本をはじめとして米国、中国、ロシア、ヨーロッパの人びとが参加する中、ソウルで「東アジア平和国際会議」を開催した。また、日本の憲法9条を守ることが東アジアの平和に死活的な意味を持つと考えて、日本で展開されていた憲法9条にノーベル平和賞を送る運動に積極的に参加した。

 

 韓日の平和、そして東アジアの平和のため、日本政府は平和憲法を改正してはならない。日本が戦後、アジアと世界から信頼を得て、平和を進めることに寄与することができた要因の一つは、平和憲法と非核三原則であった。われわれは日本国民と政府に、これを守ることを強く促したい。

 一〇〇年前、安重根先生の東洋平和論と、三一運動の独立宣言書が明らかにしているように、朝鮮半島の平和なくして東アジアの平和もないし、東アジアの平和なくしては朝鮮半島の平和もない。だからこそ、朝鮮半島と東アジアの平和のための韓日の経済協力が弱められてはならない。韓日両国民はこの間、自由、普遍的な人権、善隣関係に向けた努力によって、世界においても評価すべき友好関係を積み重ねてきた。これを両国政府が後退させることがあってはならないのである。

 

韓国は分断国家である。加えて北朝鮮の核の危機もいまだに解消されていない。その上日本との経済-平和関係までも閉ざされてしまうとすれば、身動きの取れない状況になるかもしれない。よって、南北の平和が重要なように、韓日の平和もおとらず重要である。韓日関係と南北関係、韓日の平和と南北の平和は、決して二者択一ではない。韓日の平和をもとに南北の平和を発展させ、南北の平和の成果をもって東アジアの平和を発展させる好循環が求められる。

 

来年2020年は朝鮮戦争勃発から70年の年であるとともに、東京オリンピックの年である。われわれは朝鮮半島の平和と韓日の平和がともに促され、東京オリンピックが世界の人びとの平和の祝祭となることを望んでやまない。日本が不必要な条件を付けることがないならば、隣国の国民として最善を尽くしてこれを助けるだろう。韓日はすでに2002年にサッカーのワールドカップを共催した経験がある。

 

韓日両国は1998年の金大中大統領と小渕恵三首相による共同宣言の精神に立ち戻らなければならない。日本政府は韓国人に加えた苦痛と悲劇に対する深い理解と謝罪の姿勢を、韓国政府は日本人の戦後における経済発展と東アジアの平和への寄与を認め和解の気持ちを持つことが重要である。特に日本政府は河野洋平官房長官、村山富市首相、菅直人首相の談話における歴史認識を受け継ぐよう促したい。互いに認め合い尊重する中で、未来における共同の繁栄と協力を成し遂げるため、過去を直視しつつ未来を見つめてきた、これまでの政府の姿勢に立ち返るよう提案したい。

 

第一に、韓日両政府は今後、葛藤や対立を拡大する姿勢を極力自制するよう望みたい。善隣と平和に向けた韓日市民連帯は政府間の対話に劣らず重要である。

第二に日本政府はいろいろなチャンネルで即刻、直接対話を再開するよう促したい。

第三に韓日政府間のこれまでの協定や約束が解釈の違いやあいまいさを含んでいるとすれば、両政府は一致とすり合わせに向け、成熟した真摯な直接対話と持続的な交渉で解決するよう望みたい。

 

日本国民は令和の時代を平和の時代へと築き上げていくことを熱望しているものと、われわれは信じている。安倍政権が新時代を隣国との敵対で幕開けするのであれば、日本国民の期待を打ち捨てることになり、世界を大いに失望させるだろう。われわれは去る7月28日に発表された日本の知識人75人の声明「韓国は『敵』なのか」に共感し、日本政府もその問いに正面から答えるよう期待するものである。われわれは新しい時代を敵対と対決で迎えることがあっては、決してならないだろう。

                   2019年8月12日

                      東アジア平和会議

                         署名者 67名

 

 

 

☆元公職者

李洪九(元首相)、高建(元首相)、鄭雲燦(元首相)、金元基(元国会議長)、林采正(元国会議長)、李鍾燦(元国家情報院長、友堂李会栄先生奨学財団理事長)、韓勝憲(元監査院長)、李御寧(元文化部長官)、金鎮炫(元科学技術部長官)、金成勲(元農林部長官)、金泳鎬(元産業資源部長官)金道鉉(元文化体育部次官)、朴炳元(元財政経済部次官)

 

☆元国会議員

権永吉(元民主労働党代表)、李佑宰(梅軒尹奉吉月進会代表)、尹汝雋、朴錫武(茶山研究所理事長)、李富永(夢陽呂運亨先生記念事業会理事長)

 

☆文化芸術

申林(詩人)、金禹昌(文学評論家)、白楽晴(文学評論家、創作と批評元編集人)、金炳翼(文学評論家、文学と知性元編集人)、廉武雄(文学評論家)、黄皙暎(作家)

 

☆宗教人

金喜中(大主教、韓国カトリック主教会議議長)、姜宇一(主教、カトリック済州教区長)、朴昌一(神父、イエス聖心伝教修道会)、キム・ヨンジュ(韓国宗教人平和会議前会長)、イ・ホンジョン(韓国キリスト教教会協議会総務)アン・ジェウン(牧師)、パク・チョンファ(牧師)、トボプ(仏教曹渓宗実相寺会主)、チョン・インソン(圓仏教平壌教区長)、パク・ナムジュ(天道教元教令)

 

☆学界

姜万吉(高麗大学名誉教授)、チャン・フェイク(ソウル大学名誉教授)、カン・ジョンチェ(全南大学元総長)、崔相竜(高麗大学名誉教授)、具大烈(梨花女子大学名誉教授)、キム・ミンファン高麗大学名誉教授、李万烈(淑明女子大学名誉教授、国史編纂委員会元委員長)、李泰鎮(ソウル大学名誉教授)、申仁玲(梨花女子大学元総長)、兪弘濬(明知大学名誉教授)、ユン・ヨンオ(国民大学名誉教授)、ユン・ギョンノ(漢城大学元総長)、ソ・ジニョン(高麗大学名誉教授)、イ・ジョンオ(明知大学名誉教授)、パク・チェチャン(淑明女子大学名誉教授)、イム・ヒョンジン(ソウル大学名誉教授)、キム・ジョニョン(漢南大学名誉教授)、キム・ジョンチョル(緑色評論発行人)、朴明林(延世大学金大中図書館館長)

 

☆言論人

任在慶(ハンギョレ新聞元副社長)、キム・ジョンチョル(東亜日報闘争委員会委員長)、慎洪範(朝鮮日報闘争委員会元委員長)、ユ・スンサム(ソウル新聞元社長)

 

☆市民社会

 

チ・ヨンテク(インチョン・セオル文化団体理事長)、イ・ヒョンスク(女性平和外交フォーラム名誉会長)、カン・デイン(文化科学カデミー院長)、キム・ヨンスン(韓国女性団体連合共同代表)、李三悦(対話文化アカデミー理事長)、リュ・ジョンニョル(興士団)、チョン・ガンジャ(参与連帯共同代表)、鄭聖憲(DMZ平和生命の丘に理事長)、イ・スンファン(市民平和フォーラム共同代表)、シン・ピルギュン(社会投資支援財団理事長)、ユン・ジョンスク(緑色連合共同代表)