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2024/11/10 2025年日韓条約60年にむけて シンポジウム

「日韓条約の解釈を修正し、日朝国交正常化を!」

11月10日 (日) 14:00開会 (13:30開場)

文京区民センター 3A会議室 (東京都文京区本郷4-15-14)

[申込先] https://forms.gle/VndbHsURAdP8pVkn6

会場+オンライン (zoom) のハイブリッド開催です 。

いずれも事前にお申込ください。参加費 1000円

会場参加をご希望の方のみ、 当日の飛び入り参加も可能です。

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 来年2025年は、日本にとっては敗戦80年、 韓国・朝鮮にとっては日本の植民地支配からの解放80年にあたります。 韓国とは、1965年に日韓基本条 約を結んで国交正常化して60年、両国は交流を重ね、人も文化も経済も豊 かで成熟した関係になりつつあります。 ただ、起点である日韓条約に大きな 問題がありました。 日本は韓国併合と植民地支配を反省しない姿勢のま ま、この条約を結んだからです。 また同じ日本の植民地とされた朝鮮民主主 義人民共和国とは未だに国交がありません。 もっとも近く、歴史的関係も深い隣国との関係がこのままでいいのか、日 韓条約60年を機に考えたいと思います。

 

【報告】

太田 修 同志社大学教授

吉澤 文 新潟国際情報大学 教授

和田 春樹 東京大学名誉教授

【討論】

金 恩貞 公益財団法人ひょうご震災記念 21世紀研究機構主任研究員

内海 愛子 恵泉女学園大学 名誉教授

田中 宏 一橋大学名誉教授 

 

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呼びかけ

2025年、 日韓条約60年を機して、日韓条約の解釈を統一して

日韓国交の基礎をかため、日朝国交正常化を実現しよう

 

2025 年は、日本の敗戦80年、 日韓基本条約締結 60年 に当たります。この60年の間、 様々なことが起き、解決でき ない問題もいまなお存在していますが、かつて植民地支配をした日本と植民地とされて辛酸をなめた韓国との間には、 人びとの交流も文化の交流も経済の関係も劇的に増え、平等 で豊かな関係が作られつつあります。 しかし、やはり日本の 植民地とされ辛酸をなめた朝鮮半島の北部一一朝鮮民主 主義人民共和国との間には、いまなお国交がありません。 これはきわめて異常な事態です。

2025年、この年に、私たち日本の市民が、 アジアの平和の ためになすべきこと、なさねばならないことがあります。 以下 の2点です。

 

(1) 第一は、60年前に国交正常化した韓国との間の問題 です。日韓基本条約の調印にあたり、日本は1910年の韓国 併合、 朝鮮植民支配を反省せず、謝罪もしない姿勢でのぞ みました。 日韓基本条約の第二条は、日本文では「千九百十 年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結 されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが 確認される。」 となっており、日本側は、併合条約は有効で、 1948年韓国が誕生したときに無効になったと確認しただけ である、と解釈しています。

しかし、この条項を提案した韓国側英文の原案は 「It is confirmed that all treaties or agreements concluded between the Empire of Japan and the Empire of Korea on or before August 22,1910 are null and void」 でした。 これに最終的に「already」 という一語をくわえて 「already null and void」として合意が成立したのですが、 韓国側は第 二条韓国文を 「すでに無効であることが確認される」とし、 1910年併合条約は当初から無効・不成立であるとの文意は 変わらないと主張してきました。 併合条約は韓国皇帝が 統治権を日本の天皇に譲渡すると申し出たので、天皇がそれ を受け取ることを承諾し、韓国を併合することにしたという 条約ですが、 そんなことはいつわりだ、最初から無効である ことを確認したのが基本条約第2条であるというのが、韓国 側の一貫した主張でした。

 

21世紀も4分の1を過ぎたいま、100年以上前の帝国 主義時代の併合を正当化する意味はどこにあるでしょうか。

日本も遅きに失したとはいえ、 河野談話 (1993) 細川談話 (1993), 村山談話 (1995) 日韓パートナーシップ宣言 (1998) などで、 植民地支配をしたことで朝鮮の人びとを苦し め、損害をあたえたことを認め、 謝罪しています。 菅談話 (2010) では、 「政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々 は、その意に反して行われた植民地支配によって」と記して、 併合条約が正当なものではなかったことに触れています。 条約の基本的な条文の解釈を、日韓で正反対におこない、 それで60年間放置してきたのは、まさに異常という他ありま せん。日本政府は、第二条の解釈として、韓国側の解釈を 最終的に受け入れるべきときです。

なお日韓条約の第三条 「大韓民国政府は、 国際連合総会 決議第百九十五号 (II) に明らかに示されているとおりの 朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される」 については、朝鮮半島全域を韓国とする韓国側の解釈はすで に成立しえないことが明らかで、国連の監視下で選挙がおこ なわれた南半部に限定されるとする日本側の解釈が正当な ものと認められるべきであることも付言します。

 

(2) 第二は、 植民地から解放された朝鮮半島にうまれた二 つの国家のうち、 大韓民国だけを認めて、 朝鮮民主主義人 民共和国と正常な国家関係を確立することが出来ず、 敗戦 後80年もの間、時を空費してきたことを反省しなければなり ません。 金丸訪朝団が国交正常化交渉を開始の約束をして から36年、 小泉訪朝と日朝平壌宣言から23年、いまだに 国交正常化の兆しさえないというのはどうしたことでしょう。 米ソ冷戦の時代は遠くなり、ポスト冷戦時代も終わりつつあ る中で、両国の懸案——拉致問題も核・ミサイル問題も、 経済協力問題も在日朝鮮人の処遇問題も一は、国交を正 常化し、互いに存在を認め合ってこそ解決の糸口を探ること が出来るのです。新たな危機の時代が始まりつつある今だ からこそ、 日朝国交正常化に踏み切るべきだと私たちは確信 します。 これ以上、時間を空費することは許されません。

 

私たちは日本の市民として、 東アジアの平和の基礎となる 以上の2点について、2025年の実現を目指し、 活動していき ます。 そのため、 2024年の秋、 「東アジアの平和を考える」 連続講座を行います。

2024年10月1日

石坂浩一  内田雅敏  内海愛子  岡本厚  鈴木国夫  田中宏  平山茂  矢野秀喜  和田春樹

 


2024/3/25 強制動員 韓国原告(家族・遺族)の声を聞くつどい

(ご案内) 

2023年12月から2024年1月にかけて、韓国大法院は9件の強制動員訴訟の判決を出しました。いずれも被害者の請求を認め、被告日本企業4社に賠償を命じました。

 これに対し、政府、被告企業は依然として、「問題は請求権協定で解決済み」と言い、判決を履行していません。「韓国政府が『解決策』に基づき処理するものと考えている」と他人事のように振る舞っています。

 しかし、韓国政府の「解決策」(第三者弁済)を受入れず、あくまで被告企業の謝罪と賠償を求める原告は存在します。第三者弁済を拒む原告にそれを強要することはできないのです。

 また、日立造船訴訟では、被告日立造船が二審の賠償命令判決の強制執行を回避するために納めた供託金を原告が差押え、これを裁判所が認めて原告に渡されました。原告は被告企業から間接的ではありますが賠償金を受け取りました。

 日本国内では、韓国政府が打ち出した「解決策」(韓国の財団が被告企業の賠償支払いを肩代わり)で強制動員問題は終わったという認識が広がっていますが、問題は終わってもいなければ、解決もしていません。

 3月25日、韓国から「解決策」を拒否する原告の遺族、家族及び原告代理人(弁護士)、支援者が来日し、被告企業、日本政府への申入れを行います。また、院内集会で強制動員問題の解決を日本の国会議員、メディア、市民に訴えます。

 ぜひこの院内集会にご参加ください。来日する被害者の家族、ご遺家を励ましてください。



2023/5/3 <声明> 「岸田首相は自らの言葉で語れ」

2023年5月3日

-岸田文雄首相の訪韓に当たって- 

声明「岸田首相は自らの言葉で語れ 植民地支配への反省、強制動員被害者への謝罪」 

強制動員問題解決と過去清算のための共同行動

 (https://181030.jimdofree.com/

 

 岸田文雄首相が5月7~8日の日程で訪韓することが正式に発表されました。3月16日に尹錫悦大統領が来日し12年ぶりに日韓首脳会談が開催され、時をおかず今度は岸田首相が5年ぶりに訪韓するシャトル外交の再開です。ただ問題は、岸田首相が訪韓して首脳会談で何を議論するか、です。

 

 3月6日の韓国政府の「徴用工」問題の解決策発表とその後の日韓首脳会談は、実態として日米韓の安保協力体制の立て直し、強化を最優先にして進められていることは明白です。

 しかも、2018年の大法院判決以降最悪の状況に陥ったといわれた関係がようやく隣国同士らしい関係に戻ったとは言われますが、強制動員問題は依然として未解決のままです。大法院判決を受けた15名の原告のうち10名の原告遺族は「日帝強制動員被害者支援財団」の「肩代わり」を受け入れました。しかし、長期間裁判を闘った当事者である生存原告は全員「解決策」を批判し「財団」の給付を拒んでいます。

 

 岸田首相は3月16日の日韓首脳会談の際に「日本政府は1998年10月に発表された『日韓共同宣言』を含め歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」としましたが、過去の植民地支配について自身の言葉では反省と謝罪は述べませんでした。まして強制動員被害者へ慰労、謝罪の言葉をかけることもありませんでした。日韓政府間の関係が進展しても強制動員被害者が置き去りにされたままでは被害者も韓国国民も納得できません。

 

 今回、岸田首相の訪韓の発表を受けて5月2日付の中央日報は「岸田首相が誠意ある呼応をする番だ」との社説を掲げましたが、これは韓国紙に言われて実行することではありません。

 今回の訪韓を機に岸田首相は自らの言葉で過去の植民地支配に対する反省と謝罪を表明すべきです。

同時に、強制動員の歴史的事実を認め、被害者に直接謝るべきです。そうしてこそ強制動員問題解決に向けての一歩が踏み出されます。「確認した史実から教訓を得て、より良い明日を模索するという意味」(金大中)での未来志向の日韓関係が始まります。

 私たちは岸田首相の訪韓がそのような結果を生むことを求めます。

 


2023/4/3<声明> 日韓関係の改善について

「韓国は敵なのか」声明世話人

 

 2018年以来の懸案であった「徴用工」問題に対して関して韓国の尹錫悦政権が、政府傘下の「財団」が被告日本企業の「肩代わり」をするとの解決策(第三者弁済)を出しました。これにより日韓政府関係は急速に改善に向かっています。

 首脳会談の開催、シャトル外交の復活、日韓安保対話の再開などが矢継ぎ早に公表され、それに伴って、日本の対韓輸出規制措置も緩和されました。安倍政権のこの措置は、経済的な方法によって相手国に圧力をかける「経済制裁」に他ならず、韓国から国民的な反発を受けたものでした。2019年7月、私たちが「韓国は敵なのか」声明で問いかけたのも、この安倍政権の施策が敵国に対するような措置であったからです。その解除自体はもちろん歓迎すべきでしょう。

 

 韓国では、野党、市民運動がこの解決策に反発、世論調査でも半数以上の国民が反対している一方、日本では政府、メディアは手放しの歓迎ぶりです。米国も政府、議会ともに評価しています。このそれぞれの反応の中に、この解決策が基本的に「日本の主張に沿った」ものであり、韓国政府の「前のめり」の姿勢によることを示しています。 

 隣国との関係がいつまでも悪いままでよいはずはなく、両国の外務当局が、それぞれの国内政治に苦慮しつつ協議し続けた努力の結果だと考えます。

 私たちは、韓国政府の施策について論評する立場にはありません。

 ただ、日本政府の姿勢についてこのままでいいのか、この解決策が、「徴用工」問題の解決につながるのか、隣国との深い和解に結びつくのか、大いに疑問を持ち、懸念を持っていることを表明せざるを得ません。

 

 第一は、大法院判決を受けた当事者である日本企業が何も関与しないということです。被告企業は「コメントする立場にない」として、被害者に謝罪もしなければ、賠償のための金も出しません。これでは被害者の納得は得られません。また、日本政府、とりわけ岸田総理は、自分の言葉ではっきりと植民地支配への反省と謝罪を述べませんでした。すなわち、「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」と説明しただけでした。

 岸田総理のこの表現で、植民地支配への反省と謝罪、「歴史への真摯な態度」の表明と受け止める人はいないでしょう。

 私たちは、これまでくり返し、加害の側が被害者の側の「心に届く誠実な謝罪」を示すことが、両国民の和解にいたる前提であると述べてきました。

 「加害の歴史を清算するとは、①加害者が加害の事実と責任を認めて誠実に謝罪し、②その証として何らかの金銭的補償を行い、③過ちを繰り返さないために問題を後世に伝えるということ」である、と(2021年3月「慰安婦問題の解決のために」)。そして「この三つの関係が大切です。①②とともに、③を誠実に継続実行することによって①②の謝罪が真摯なものであることが被害者・遺族に理解されるようになるのです。」と。

 強制動員の事実を認めず、誠実な謝罪をしない(あるいはできるだけ謝罪を薄めたいとする)ことは、その責任を認めていないことに他なりません。今回の岸田総理、日本政府の姿勢、被告企業の対応は、禍根を残したと考えます。

 

 第二は、日韓の和解が、対朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、そしてひいては対中国の安保政策を優先してなされたことです。米国の歓迎の背後には、日米韓を結び、北朝鮮(そして中国)を封じ込める米国中心の軍事戦略があります。GSOMIYA(軍事情報包括反故協定)の正常化はその一環です。

 ひとつの国との和解が、もうひとつの国への敵対に基づいているのは健全なことではありません。とりわけ、日本にとって北朝鮮は、和解しなければならない相手でもあります。2002年の小泉総理訪朝と「日朝平壌宣言」は両国和解の第一歩となりましたが、その後20年間、国交正常化にはいたらず、交渉は断絶し、危機はより深まっています。

 クリントン政権時代、北朝鮮との戦争は、あまりに巨きな被害をもたらすがゆえに不可能というシミュレーション結果が出ています。その頃と比較しても、戦争の惨禍はさらに大きなものになることは明らかです。軍事的圧力で問題を解決することはできないのです。

 

 2018年、米朝、中朝、南北、ロ朝間で首脳会談が行われる中で、唯一対話できなかったのが日本でした。日本は、この地域で対話より緊張を選んでいると見なされているのではないでしょうか。あるいは、この地域で「主体」と見なされていないのでしょうか。いずれにしろ、安倍外交のこうした負の遺産の反省と是正が求められています。

 対北朝鮮において、国交の正常化、和解の促進と東アジア地域の安全保障システムの構築が求められていると私たちは考えます。韓国に対して植民地支配を謝罪し個別的な謝罪要求や補償に応えることは、今後の北朝鮮との対話に向けた信頼形成の一助となるはずです。

 

1998年、金大中大統領が来日し、小渕総理との間で「日韓パートナーシップ宣言」に署名したとき、両首脳間で永住外国人に地方参政権を認めることが確認されました。日本では1998年以降「永住外国人地方選挙権付与法案」が幾度も提出されましたが、いまだ成立を見ていません。一方韓国では、2005年に法改正が成立し、翌年の統一地方選挙から外国人の投票が実現し、すでに4回を重ねています。過去四半世紀、人権や人びとの権利について、韓国は前に進み、日本は立ち止まったままです。このような日本の状況を、私たちは残念に思います。前に進もうとするかどうか、両国の姿勢の差が、このたびの問題解決への姿勢にも現れているのではないでしょうか。

 

政府間では対立していても、日韓両国民の間では様々な交流が活発になっています。お互いの国や国民や文化が好きで、旅行で行き来する人も多く、その意味では国民レベルでは政府より和解は進んでいたともいえるでしょう。コロナ感染が終わりつついま、さらに訪問や交流をする機会も増えると思います。KポップやKドラマから、歴史を学んだ日本の若い世代も現れています。私たちは、未来は明るいと希望をもっています。

 思えば、国交正常化以来、何度「日韓関係改善」「新日韓関係」が叫ばれたことでしょう。その原因を相手にだけ見いだす思考をもはや止めるべきときだと考えます。

 2023年4月3日

 

「韓国は敵なのか」声明世話人

石坂浩一 内海愛子 内田雅敏 岡本厚 鈴木国夫 田中宏 矢野秀喜 和田春樹         


2022/11/30 被害者が生きているうちに解決を!強制動員問題

韓国で今年5月に尹錫悦政権が誕生して以降、 日韓関係改善に向けて両政府間で協議が重ねられています。 その中で、 “懸案” である 「徴用工」 問題についても 「早期解決に向けて両国間の協議を継続していく」 ことを合意しています。

 しかし、 日本側は依然として 「韓国側に “ボール” はある」、 「韓国側が責任を持って対応すべき」との態度をとり続けているように思われます。 これで強制動員問題を被害者が納得するかたちで解決することができるでしょうか。

 韓国政府は 「拍手は片手ではできない (孤掌難鳴)」 と言い、 「日本側の誠意ある呼応が必要」 と訴えています。 この問題の発端が戦時下の強制動員にあったことを想起するならば、 ある意味当然の主張です。 日本は今こそ過去に誠実に向き合い、 被害者の同意を得られるような解決をめざしていくことが求められています。

 そのためにはこの国で、 「徴用工」 問題を解決するのは今をおいてない、 という世論を形成していく必要があります。 その取り組みの一環として、 国会議員、 市民が集い、 幅広く意見を交わしました。当日の記録をYouTubeでご覧ください


 

 強制動員問題解決に向けての共同声明 

「被害者が生きているうちに解決を! 今こそ謝り、つぐなうとき」

  2022 年 11 月 30 日

 〔呼びかけ〕 強制動員問題解決と過去清算のための共同行動

 

 2018 年秋、韓国最高裁(大法院)は、強制動員の被害事実を認め、日本企業に賠償を命じる判決を出しました。しかし、日本政府はこの判決を 1965 年の日韓請求権協定で「解決済み」であり「国際法違反」と決めつけ、韓国に対して経済報復をしました。判決から4年が経過しましたが、判決は履行されていません。

 

 現在、韓国政府は問題解決に向け、被害者側の意見を聞き取りつつ、解決策を検討しています。関係財団に基金を設置し賠償支払いを「肩代わり」させる案も示されていますが、日本側に「片手で拍手はできない」と「誠意ある呼応」を求めています。韓国側が求めている呼応とは、日本の企業の謝罪と「財団」(基金)への出資です。しかし、日本政府はそれに応答する姿勢を示していません。2021 年には歴史教科書から朝鮮人強制連行、強制労働の事実を削除するに及んでいます。このような対応では問題は解決しません。

 

 ところで、日本の政権は 1995 年の村山談話以後、朝鮮植民地支配に対する反省と謝罪を表明してきました。1989 年3月、竹下登首相も国会で「日本政府及び日本国民は、過去における我が国の行為が近隣諸国の国民に多大の苦痛と損害を与えてきたことを深く自覚して、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って平和国家としての道を今日まで歩んできた」。「そのような自覚と反省は、歴史的にも地理的にも我が国と最も近接しております朝鮮半島との関係においても、とりわけ銘記さるべきもの」と述べています。過去の朝鮮人強制連行訴訟では日本製鉄、日本鋼管、不二越などの企業が被害者と和解し、金銭を支払った事例もあります。

 

 過去、日本が朝鮮半島の人びとに与えた苦痛と損害、その歴史事実を自覚し、反省するという立場に立てば、韓国側の求めに応ずることは、困難なことではないでしょう。2022 年9月、三菱重工訴訟原告の梁錦徳(ヤン・クンドク)さんは次のように書いています。「お金が目的だったら、私はとっくの昔に諦めていたでしょう。私は日本から謝罪を受ける前に、死んでも死に切れません」。同月、日本製鉄訴訟の原告である李春植(イ・チュンシク)さんも次のように語っています。「補償を受けられなかったため、裁判をしたが、結果だけを受け取った。生きているうちに問題が解決することを望む」と。このような強制動員被害者の声を受け止め、誠実に行動すべきです。

 

 私たちは日本政府、関係企業に訴えます。植民地支配下での強制動員の歴史を自覚し、反省すべきです。「解決済み」の姿勢を改め、韓国の判決を受け入れ、被害者の救済に向け、謝り、つぐなうべきです。

 

 2022 年 11 月 30 日

 〔呼びかけ〕 強制動員問題解決と過去清算のための共同行動

住所:横浜市鶴見区豊岡 20-9 全造船関東地協労組気付

mail: 181030jk@gmail.com   URL:https://181030.jimdofree.com/

〔賛同者・賛同団体〕

 


2021年夏、日韓関係の現状についての私たちの見解

------ このまま放置は許されない ------

2021年8月14日

 石坂浩一、内田雅敏、内海愛子、岡本厚、鈴木国夫、田中宏、矢野秀喜、和田春樹

 

 

 新型コロナ感染に対する愚策の連続、オリンピックの強行開催と感染者の爆発的拡大など、この1年間の日本の有り様は、政治の劣化と衰退の現実を「これでもか」というほど、私たちに見せつけています。日本の行くべき方向、世界の進むべき方向について、何の展望も理念も理想もなく、漂っているのがいまの日本です。何よりトップにメッセージを発したり、対話をする意欲や能力がないのが決定的です。

 

 惨憺たる結果の一つが、国交正常化以来最悪と言われる日韓関係です。

 

■ 「韓国は「敵』なのか」――二年前私たちは敵対の流れに待ったをかけた

 2019年7月、日本政府が半導体製造素材三品目の対韓輸出に関する特別措置を停止した時、私たちは「韓国は『敵』なのか」と問う声明を発しました。これらの措置は、経済的手段をもってする圧力、制裁に他ならないからです。私たちはこの敵対的な措置を撤回し、韓国政府との間で、冷静な対話・話し合いを開始することを求めました。 国内外からも批判の声が起こり、安倍晋三首相(当時)もさすがに立ち止まらざるをえず、同年10月4日には、国会での所信表明演説で、韓国は「重要な隣国」だと言及するにいたりました。しかし、安倍首相はそう言っただけで日韓関係を正常化するためにいかなる努力もはらいませんでした。「実質的な効果は何もなかった愚策」、政権内でこう言われている対韓輸出規制措置は、今日にいたるも継続維持されています。

 

■ 重要な隣国なら、首脳会談を真っ先にやるべきではないか

 深刻な対立関係におちいった日韓関係を打開するためには、首脳同士が会談をもち、話し合うことからはじめるのが当たり前です。安倍首相が健康を理由として辞任して、菅義偉氏が後継首相となったとき、この絶好のチャンスが訪れたと私たちは考えました。2020年9月、私たちは第二の声明『今こそ日韓関係の改善を』を出し、何よりもまず日韓首脳会談の開催を求めました。しかし、菅新首相がまず訪問し会談したのは、ベトナムとインドネシアの首脳であり、続いて米国のバイデン大統領でした。

 

 隣国の大統領との対面を避けつづけてきた菅首相にとって、東京オリンピックの開会式に文在寅大統領が出席する意向を表明したのは、願ってもない機会でした。菅首相は、文大統領と会談して、懸案の解決に乗り出し、関係を改善したいと意欲を表すのが当然でした。ところが、菅首相は、その意欲を最後まで示さず、みすみす貴重なチャンスを見送ったのでした。

 

 日韓間で協議が行われていたとき、日本の在韓公使から、韓国大統領を辱める発言がなされたことが明らかになりました。この不埒な外交官相馬弘尚氏は当然ながら即刻解任されるべきでしたが、ただ帰国命令が出されただけでした。隣国の大統領を侮辱し、隣国の人びとの日本に対する感情をさらに悪化させたこの外交官を日本政府は懲戒処分とすべきでした。

 

 深刻なのは、首相が「重要な隣国」の大統領との会談を避け、この課題から逃げていることが明らかになったことです。首脳会談をもち解決の糸口をつかんで事態を打開するという責任感、解決の意欲をもたないのであれば、そのような首相は任にたえないと判断せざるを得ません。

 

■ 韓国に対して、どうしてそんなに尊大な態度をとれるのか

 2019年以降、日本政府、外務省、メディアの解説者たちは、日韓関係を悪化させたのは韓国の大統領、議会、裁判所、市民運動が、日韓基本条約、請求権協定、2015年慰安婦問題合意で問題が解決されていることを否定して、不当な要求を日本につきつけてくるからである、と主張してきました。「問題は自分たちが解決する」と韓国側が申し出て、はじめて関係改善は図られるというのです。 

 

 どうして、いつからこのような尊大な態度を日本は韓国に対してとるようになったのでしょうか。韓国政府の対応に、混乱もあり一部に不安定さがあったのも事実ですが、日本と韓国のあいだにある歴史問題は、基本的に、日本が韓国併合(1910年)により朝鮮半島を日本の領土とし、そこに住む人々を日本帝国の臣民にさせたことに根源があるのです。日本は、戦後、1965年の日韓基本条約締結の時点では、韓国併合、朝鮮植民地支配について反省も謝罪もしていませんでした。しかし、30年後の1995年の村山富市総理談話において、植民地支配がもたらした損害と苦痛に対して反省し、お詫びを表明するにいたったのです。

 村山談話は、以後のすべての内閣が継承する日本政府・国民の歴史認識の基礎です。加害の事実を認め、反省し、謙虚な態度を貫くことが基本です。日本政府が、現在韓国政府に対して見せている尊大な態度は、村山談話の精神に背くものであり、許されないと私たちは考えます。

 

■ 軍艦島などの展示に関する約束を、ユネスコに批判されても無視している

 ここで私たちが驚くのは、世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」と「産業遺産情報センター」についての問題です。2015年7月、日本政府は、「明治日本の産業革命遺産」のユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産登録に際して、ユネスコの勧告を受け入れ、「日本は、1940年代にいくつかのサイトにおいて,その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと、また、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる所存である。日本は,インフォメーション・センターの設置など、犠牲者を記憶にとどめるために適切な措置を説明戦略に盛り込む所存である」と約束しました。

 

  今年6月、ユネスコが現地調査したところ、この約束が果たされていないことが判明したのです。「産業遺産情報センター」は、植民地朝鮮から朝鮮人たちが意に反して連れてこられ、労働を強制された歴史的事実を否定し、自分たちに都合のよい証言しか採用していませんでした。このため7月22日、ユネスコ世界遺産委員会は、それに強い遺憾を表明し、改善を勧告したのです。しかし、日本政府は、約束不履行に関する指摘を受けても、修正する姿勢を見せていません。まことに尊大で恥知らずな国に成り果てています。

 

■ 日本政府の方が、2015年慰安婦合意を実行していない

 日本政府は、韓国政府がことごとく政府間合意を破っているかのように主張していますが、2015年の慰安婦問題合意についてみれば、合意の内容を矮小化し、歪め、愚弄しているのは日本政府の方だと言わざるを得ません。

 

 今年6月11日、那谷屋正義参議院議員(立憲民主党)が「日韓関係を正常な隣国関係にするための過去の努力に関する質問主意書」を提出し、6月25日、菅総理の「答弁書」が出されました。答弁書は、菅内閣も河野洋平官房長官談話、村山談話を継承していることを明かにし、アジア女性基金の事業についてはその際出された首相のお詫びの手紙を含め、最大限の協力を行ったことを確認しながらも、2015年の慰安婦合意については、出された質問に対して回答することを拒絶したのです。

 

 那谷屋議員の質問主意書の第4項は次のようなものでした。

 「二〇一五年(平成二十七年)十二月二十八日、岸田外務大臣はソウルの地において尹炳世韓国外務部長官と会談し、合意した内容を共同記者会見の席上、次のように発表した。

『(一) 慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。

(二) 日本政府は、これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒す措置を講じる。』」

 

 「菅総理は、この合意をまとめた安倍内閣の官房長官であり、二〇一五年合意の基本的内容を継承しているのは当然であると考えるが、改めて伺いたい。菅内閣としても、二〇一五年合意の際に岸田外務大臣が発表した立場、特に、前述の(一)と(二)の内容を継承しているのか、否か、明らかにしていただきたい。」

 

 これに対して、菅総理の答弁書は次のように述べたのです。

 

 「平成二十七年十二月二十八日の日韓外相会談で確認された慰安婦問題に関する合意については、同会談で岸田外務大臣(当時)が尹炳世韓国外交部長官(当時)と協議を行い、韓国政府としての同合意に対する確約を直接取り付けたものであり、また、同長官(当時)は、同会談後の共同記者発表の場で、同合意を日韓両国民の前で、国際社会に対して明言した。さらに、同合意は、同日の日韓首脳電話会談でも確認された。同合意においては、慰安婦問題が『最終的かつ不可逆的に解決されること』が確認されている。」

 

■ 菅総理は、日韓合意の核心部分を認めることを拒否した

 2015年日韓合意の核心は、日本国総理大臣が「政府の責任をみとめて謝罪」したこと、謝罪のしるしとして「政府予算により、すべての元慰安婦の方々の心の傷を癒す措置を講じる」ことでした。にもかかわらず菅総理の答弁書は、その核心的な内容を確認することを拒否し、その代りに、なんと合意の内容は「慰安婦問題が『最終的かつ不可逆的に解決されること』が確認」されたことだ、と主張しているのです。これでは日本政府は自分で合意の内容を、矮小化し、歪曲していると言わざるを得ません。

 

■ 総理の謝罪を被害者に伝達することによって、日韓合意を誠実に履行することになる 

 日韓合意の核心は総理大臣の謝罪と謝罪のしるしとしての金員の国庫からの拠出です。ところが、日本政府は10億円の政府資金を閣議決定により韓国政府におくったのですが、総理大臣の謝罪は、本人の言葉で表明されることはなく、文書化されて韓国側に渡されることもなかったのです。韓国で慰安婦被害者に治癒金を渡した「和解治癒財団」が、総理大臣の謝罪の手紙を要請したとき、安倍首相が「そのようなことは、毛頭考えていない」と述べて、合意にもとづく和解治癒財団の事業を窮地に立たせたことは広く知られています。

 

 菅総理は、日韓合意を尊重、継承するというなら、日本の総理大臣の謝罪の手紙を慰安婦被害者に届けることを、今からでもやるべきです。

 

 私たちは、2021年3月24日、慰安婦問題についての意見を『共同論文』の形で発表しましたが、その中で次のように提案しました。

 

 「私たちは、日韓両国政府に対し、まず『2015年合意』を再確認し、その合意の精神をさらに高めるための努力を要請します。菅総理は、河野官房長官談話、村山総理談話を継承する政府の立場から、2015年合意の核心部分を再確認し、「政府の責任を痛感して、すべての慰安婦被害者にお詫びと反省の気持ちを表明」した安倍総理の言葉をあらためて文章にして署名し、日本政府を代表する駐韓大使をして、20人といわれる生存慰安婦被害者にその意を届けさせるべきだと思います。」

 

 こうしなければ、2015年合意を誠実に実行したことにならないのです。

 

 文在寅氏は、大統領選挙時には2015年合意反対を掲げました。しかし、2021年年頭記者会見では2015年合意を正式な「政府間合意」と認めました。日本政府が誠実な対応を取るならば、双方の努力で合意の精神を高めていく可能性も残されていると私たちは考えます。

 

■ 慰安婦合意を生かせるなら、そこから徴用工問題の解決へ進むことができます

 徴用工問題は、1965年国交正常化時にどう「処理」されたかを検証することは必要でしょう。ただ、1965年の日韓基本条約締結の時点では、日本は韓国併合、朝鮮植民地支配について反省も謝罪もしていませんでした。もちろん個人補償もしていません。日本の植民地支配下の戦争動員に根源のある被害者の訴えがつづくかぎり、これをどのように救済するかは日韓両政府、日韓両国民が話し合って、道をみつけるほかないのです。慰安婦合意を生かして前進が図られるなら、その延長上に徴用工の問題を取り上げて、両国の関係者の話し合いで解決することができるでしょう。問題解決の原則はすでに明らかになっています。

 

私たちは前述の共同論文において、次のように述べました。

 

「加害の歴史を清算するとは、

①加害者が加害の事実と責任を認めて誠実に謝罪し、

②その証として何らかの金銭的補償を行い、

③過ちを繰り返さないために問題を後世に伝えるということです。」

 

 これは被害を与えたものが被害者に対して為すべき、世界共通の原則です。とりわけ③が大切です。③を誠実に遂行することによって、①の謝罪が真摯なものであることを被害者が理解するのです。①、②をもって歴史問題の終止符とさせてはなりません。謝罪を繰り返すことは不要かも知れません。しかし、「前事之不忘、後事之師」と言い、「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目(ママ)となります」(ワイツゼッカー)との戒めもあります。過去の歴史を継承し、誠実に向き合う姿勢こそが、被害者側の信頼をつなぎとめる要です。

 

■ 重ねて問います「日韓関係は、このままでいいのですか」

 敗戦から七六年目の夏、日本はいまあきらかに危機のなかにあります。コロナ・ウィルスの感染が深刻化するなかで、漫然とオリンピック大会を強行開催した政府が発する空虚な言葉に、人びとは絶望しています。その中で、重要な隣国との関係も見るも無残な状態になり、それが2年も放置されています。

 

 これから両国の政権がどうなろうと、日本の朝鮮植民地支配の歴史を消し去ることはできません。日韓基本条約が孕んでいた構造的矛盾も変わりません。植民地支配の被害者の権利回復と両国の関係改善のためには、冷静な対話と外交協議を重ねること、国民の理解を得ていくこと以外にないのです。

 

 この8月14日、私たちは1991年8月14日に金学順さんが、自らを日本軍「慰安婦」であったとカムアウトされてから30年を迎えます。金学順さんは94年6月、東京地裁で「恥ずかしいのは『慰安婦』であった私ではなく、過ちをきちんと認めず、謝罪もしない日本政府だ」、「大事なのはお金ではなく、日本政府の事実認定と公式謝罪だ」と証言されました。

 

 私たちは、改めて日本政府と日本に住むすべての人々に重ねて問いたいと思います。「日韓関係をこれ以上、放置していいのですか。友好を願っている両国民が、いまのように分断されたままでいいのですか」と。

 

 


2021/7/18  シンポ開催「『慰安婦』問題をどう解決するか」

2021年7月18日、オンライン・シンポジウム「『慰安婦』問題をどう解決するか」を開催し、遠隔地も含めて約130名のご参加をいただきました。

 日本軍「慰安婦」をめぐる問題は、1990年代の元「慰安婦」のカミングアウト以来、解決に向けて様々な努力がなされましたが、30年後のいまも日韓両国間の懸案であり続けています。声明「韓国は「敵」なのか」世話人8名は、日本の市民として、この問題をどう考えるか、2021年3月に共同論文「慰安婦問題の解決に向けてーー私たちはこう考える」を発表しました(本HP掲載)。韓国の市民の中にも、この提起を受けて応答しようという動きがあります。

市民には、こうした問題にかかわるには影響力に限界があり、またただちに解決されるような問題でもありませんが、まずはこの問題にかかわってきた様々な立場の人たちが自由に意見を述べあい、議論しあう「場」が必要だと考えました。今回、声明世話人を主催者として企画し、開催したシンポジウムは、その「場」をつくる試みです。いま何が動いているか、解決のためにこれから何をすべきか、考えていくためのシンポジウムでした。 

 シンポジウムは、「経過報告」とそれぞれの立場からの「発言」の2つに分けて行われました。

 

1.経過報告

経過報告は、共同論文の趣旨、反響、本シンポジウムの目的などを、岡本厚・「世界」元編集長が行い、韓国からは南基正・ソウル大学教授が、韓国側で日本側の提起を受け、どのような議論をしているかを報告しました。

また「那谷屋議員質問主意書」とその回答は何を物語っているかについて、和田春樹・東京大学名誉教授が報告し、最後に内田雅敏・弁護士が、議論の焦点となっている「2015年日韓慰安婦合意」をどう捉えるか、報告しました。

(*報告のレジュメと資料は、別に掲載しています

 

2.発言

 休憩をはさんで、これまで「慰安婦」問題に様々な立場でかかわってきた方たちが発言しました。発言されたのは、以下の方々です。

 李鍾元(早稲田大学教授)、吉川春子(「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナール)、堀山明子(毎日新聞前ソウル支局長)、箱田哲也(朝日新聞論説委員)、花房俊雄(元関釜裁判を支援する会代表)、東郷和彦(静岡県グロ-バル地域センター客員教授、元外交官)、谷野作太郎(元中国大使)、小林久公(過去と現在を考えるネットワーク北海道)、金性済(NCC総幹事)、川上詩朗(弁護士)、大森典子(弁護士)

 

3.  次回のシンポジウムは、より深い「対話」「議論」を

 今回のシンポジウムは、多くの示唆に富む発言をいただきましたが、時間の関係もあり、「対話」「議論」の場にすることは出来ませんでした。

 共同論文を批判する市民運動の声明も出ています(資料参照)。それも大事な声として受け止めつつ、次回のシンポジウムは、より深い「対話」「議論」が出来るように、いま世話人で議論を進めているところです。30年にわたって、様々な試みがなされましたが、残念ながら「解決」にはいたりませんでした。日韓政府間だけでなく、それぞれの市民の間にも多くの葛藤が生じています。それだけ困難な問題であるということですが、なぜそうなっているのか、検証と分析が必要だと考えます。 

 

 なお、本シンポジウムについて、共同通信、しんぶん赤旗、ハンギョレ新聞(Yahooニュースが転載)などが報じています。

 


2021/6/25 慰安婦問題に関する質問主意書に対して、菅内閣は、歴代の談話等を継承すると答弁書

 この6月、菅内閣の慰安婦問題に関わる認識について、重要と思われるやりとりがありました。那谷屋正義議員(立憲民主党)の質問主意書とそれに対する総理の回答です。以下に、質問主意書とそれに対する回答を合わせて掲載し、註を本HP世話人の責任で付しました。


那谷屋正義参議院議員提出「日韓関係を正常な隣国関係にするための過去の努力に関する質問主意書」と菅義偉内閣総理大臣答弁書(2021/6/25)

【那谷屋正義参議院議員提出 質問主意書】

日韓条約の締結以来、五十五年が経過した。日本と韓国は互いに重要な隣国として正常な国家関係を維持し、協力友好を発展させるように、様々な努力を重ねてきた。特に両国関係の過去からくる不幸な歴史の傷跡を克服するために、真剣な努力が払われたことは特筆に値する。二〇一五年(平成二十七年)には慰安婦問題の解決のための新たな政府間合意(二〇一五年合意)が生まれ、新たな努力がはじまった。しかるにこの合意をめぐって新たな反発や失敗がみられ、日韓関係の冷え込みが起こったのは遺憾である。ようやくにして韓国大統領が本年一月の記者会見で二〇一五年合意は「両政府の正式な合意」だと明言されて以来、韓国内の動きも活発になり、相互理解と対話、協力により、事態の打開を進めうる形勢が日韓双方に現れている。韓国の女性団体が問題を提起したのを受け、日本政府と国民がこの問題の解決に取り組みはじめてから、三十年の歳月が流れた。韓国の市民の毎週デモは千五百回目を迎えようとしている。数少なくなった韓国の生存被害者の中には日本になお謝罪を求める声がある。この際、日本の努力の積み重ねを再検証、再確認し、政府のお詫びと反省の真意をはっきりと説明することによって、本当の合意に近づくことが、日韓関係を正常な隣国関係に戻す土台となるものと考える。そのような考えから、以下の質問を行う。

 

------------質問主意書-------------------------------------------

一 一九九三年(平成五年)八月四日、日本政府は国の内外での資料収集調査に基づき獲得した慰安婦問題認識を河野洋平官房長官談話(以下「河野談話」という。)として発表した。河野談話は、軍当局の要請で、慰安所が広範な地域に設営されたことを認め、慰安所の設置と管理、慰安婦の移送に日本軍が直接間接関与し、慰安所の生活は、「強制的な状況の下での痛ましいものであった」と述べた。その上で、次のように謝罪し、約束した。

「本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、・・・いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。」、「われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。」

この河野談話は以後の歴代の内閣において継承されてきた。安倍晋三総理も、二〇一四年(平成二十六年)三月十四日に参議院予算委員会で、河野談話について、「安倍内閣でそれを見直すことは考えていないわけであります」と述べ、菅義偉官房長官が「政府の基本的立場は官房長官談話を継承するということであります」と補足した。菅内閣においても、河野談話を継承しているか否か、明らかにしていただきたい。

 

内閣総理大臣菅義偉 答弁書】 政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話を継承しているというものである。

 

 

------------質問主意書-------------------------------------------

 二 一九九五年(平成七年)八月十五日、戦後五十年に際して、村山富市総理は閣議決定に基づき、総理談話を発表した。この中で、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、・・・疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」と述べている。この内容のうち、植民地支配がもたらした損害と苦痛に対する反省と謝罪は、一九九八年(平成十年)の日韓パートナーシップ宣言に収められ、二〇〇二年(平成十四年)の日朝平壌宣言にも収められた。安倍総理は二〇一三年(平成二十五年)五月十五日、参議院予算委員会で、村山談話を「政権としては全体として受け継いでいく」旨表明した。

菅内閣においても、村山談話を継承しているか否か、明らかにしていただきたい。

 

内閣総理大臣菅義偉 答弁書】

お尋ねについては、政府の立場は、参議院議員山本太郎君提出平成二十七年八月十四日の「内閣総理大臣談話」に関する質問に対する答弁書(平成二十七年十月六日内閣参質一八九第三二五号) 一から三までについてでお答えしたとおりであり、菅内閣においても変わりはない。

(世話人註) 山本議員の質問主意書に対する安倍内閣総理大臣の答弁書には「いずれにせよ、安倍内閣としては、村山談話及び小泉談話について全体として引き継いでいる」と述べられている。

 

 

------------質問主意書-------------------------------------------

三 一九九五年(平成七年)に政府は慰安婦被害者に対してお詫びと償いの事業を実施する財団法人女性のためのアジア平和国民基金(以下「アジア女性基金」という。)を設立し、原文兵衛氏を理事長に据え、フィリピン、韓国、台湾の被害者に事業を開始した。その際、慰安婦被害者のお一人お一人に総理のお詫びの手紙、原文兵衛理事長のお詫びの手紙とともに、償い金二百万円、医療福祉支援として百二十万円ないし三百万円を渡した。償い金は国民からの拠金を財源とし、医療福祉は政府の拠出金によってまかなわれた。総理の手紙には、「私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます。・・・わが国としては、道義的責任を痛感しつつ、・・・過去の歴史を直視し、・・・後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。」と書かれていた。この手紙はフィリピンの被害者二百十一人、韓国の被害者六十人、台湾の被害者十三人に渡されたが、その手紙には橋本龍太郎総理、小渕恵三総理、森喜朗総理、小泉純一郎総理が署名した。

菅内閣においても、アジア女性基金の事業、歴代総理のお詫びの手紙を日本国家の正当な努力であったと評価しているのか否か、明らかにしていただきたい。

 

内閣総理大臣菅義偉 答弁書】

政府としては、御指摘の「女性のためのアジア平和国民基金」の事業に対し、同基金が御指摘の「手紙」を当該事業の対象者に渡すことを含め、最大限の協力を行ってきたと考えている。

 

 

------------質問主意書-------------------------------------------

四 アジア女性基金はフィリピン人とオランダ人の慰安婦被害者の大多数には受け入れられたが、韓国では政府登録の被害者の三分の一以下の人にしか受け入れられなかった。そして、アジア女性基金が解散した後、二〇一一年に韓国憲法裁判所が韓国政府の行動を違憲であると判定した。李明博大統領は日本政府に慰安婦問題解決に一層の措置を求めるようになり、それが二〇一三年からは朴槿恵大統領に受け継がれた。日韓両国の間で深刻な交渉が続いた結果、ついに合意に至り、二〇一五年(平成二十七年)十二月二十八日、岸田外務大臣はソウルの地において尹炳世韓国外務部長官と会談し、合意した内容を共同記者会見の席上、次のように発表した。

「(一) 慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。

(二) 日本政府は、これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。」

菅総理はこの合意をまとめた安倍内閣の官房長官であり、二〇一五年合意の基本的内容を継承しているのは当然であると考えるが、改めて伺いたい。菅内閣としても、二〇一五年合意の際に岸田外務大臣が発表した立場、特に、前述の(一)と(二)の内容を継承しているのか、否か、明らかにしていただきたい。

 

内閣総理大臣菅義偉 答弁書】

平成二十七年十二月二十八日の日韓外相会談で確認された慰安婦問題に関する合意については、同会談で岸田外務大臣(当時)が尹炳世韓国外交部長官(当時)と協議を行い、韓国政府としての同合意に対する確約を直接取り付けたものであり、また、同長官(当時)は、同会談後の共同記者発表の場で、同合意を日韓両国民の前で、国際社会に対して明言した。さらに、同合意は、同日の日韓首脳電話会談でも確認された。同合意においては、慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決されること」が確認されている。同合意の内容は、同共同記者発表の場で発表したとおりであり、政府としては、同合意が着実に実施されることが重要と考えている。

 

 

------------質問主意書-------------------------------------------

五 韓国では朴槿恵大統領が和解治癒財団を設立し、日本政府が閣議決定して、送った十億円を受け取り、生存被害者に一億ウォン(約一千万円)、被害者遺族に二千万ウォン(約二百万円)を支給した。その支給にあたり、二〇一五年合意の際に岸田外務大臣が表明した日本政府の立場、特に、前記四の(一)の内容を安倍総理の手紙にして与えてほしい、それを、被害者、その遺族に渡したいという希望が和解治癒財団から出されたが、日本政府はなぜかその要請に応じなかった。当時四十七人生存していた慰安婦被害者は現在十人程度しか元気でおられない。

菅総理としては、「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。私は、日本国の総理大臣として、改めて慰安婦として、数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からのお詫びと反省の気持ちを表明する」というような手紙にご自身の署名を添えて、駐韓日本大使をして現在お元気でおられる慰安婦被害者のもとに届けさせるお考えはないか、お伺いしたい。

 

内閣総理大臣菅義偉 答弁書】 回答なし

 

 

------------質問主意書-------------------------------------------

六 文在寅大統領の政府は、二〇一八年十一月二十一日、和解治癒財団の解散を進めると発表したが、財団が残した残余金は約五十七億八千万ウォン(約五億七千八百万円)であり、韓国政府が支出した百三億ウォン(約十億円)と合わせて使途を考え、日本から送られた十億円の残余金のうち、約五億七千八百万円については日本と協議するという方針が明らかにされた。韓国政府部内、周辺には、残った十五億円すべてを投じて慰安婦問題についての研究所を韓国政府が設立、運営し、日本政府に協力を要請するという構想もあると言われている。

菅内閣においては、日本が慰安婦の名誉回復、心身の傷の治癒のために送った十億円の残りを韓国政府の慰安婦問題研究所の設置のために使うという案をどのように考えるか、お伺いしたい。

 

内閣総理大臣菅義偉 答弁書】回答なし

 

 

----------------以上------------------------------------

 


2021/5/24 菅内閣の強制連行・強制労働に関する4・27国会答弁の撤回を求める声明

菅内閣の強制連行・強制労働に関する4・27国会答弁に対して、「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」が次の声明を発表しました。資料ページ掲載しています。

 




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