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2025/2/28  声明「高校無償化拡充策決定の報に接し、朝鮮高校排除をあらためて憂う」の発表と Change.org署名のお願い


高校無償化拡充を決定するなら朝鮮高校生も対象にしてください。日本に生きている子供たちを差別しないでください。という声に、ぜひご賛同ください。日本政府に署名を提出します。
署名:  https://chng.it/6996ZWYvGG

声明「高校無償化拡充策決定の報に接し、朝鮮高校排除をあらためて憂う」

 

「高校無償化」は民主党政権の2010年4月に発足した制度で、後期 中等教育をうける生徒に授業料を給付するものです。普通高校に限られず、専修学校、外国人学校をも対象とする画期的なものでした。だが、この「高校無償化」制度から朝鮮高校が排除されたため、以後長くこの問題が係争の種となり、関係者を苦しめてきました。

 

2010年の制度では 外国人学校については、(イ)本国の高校に相当するもの、(ロ)国際教育評価機関の認定するもの、(ハ)その他文科大臣が「高校に類する課程」と指定したもの、に3分類され、審査の上、適用の対象に選定されることになっておりました。朝鮮学校は、このうち(ハ)に含まれるとされ、審査がおこなわれました。審査中に、北朝鮮による韓国・延坪島砲撃事件がおこると、2010年11月24日、菅直人首相が、朝鮮学校の審査「凍結」を指示しました。菅首相は退陣を前に2011年8月29日、凍結「解除」を指示しましたが、つづく野田政権のもとでも審査は進みませんでした。2012年12月、第2次安倍晋三政権が誕生すると、下村博文文科大臣が朝鮮高校は対象から除外すると発表しました。下村大臣は会見で、「拉致問題に進展がない」こと、朝鮮高校は朝鮮総連と密接な関係にあり、・・・その影響が及んでいること」を理由として、前述の(ハ)を省令から削除し、朝鮮高校「不指定」を通知したと説明したのです。

この決定が発表されるや、朝鮮高校生への適用を求めてきた同高校の生徒、保護者、学校関係者らは、強くこの差別措置に抗議し、是正をもとめて、熱心な運動を開始しました。日本人の市民も同調し、「朝鮮高校に無償化措置を適用せよ」と求める運動はその時から今日まで13年にわたり、たゆまず続けられています。

 

この問題は国際的にも注目を集めました。朝鮮高校排除を最初に取り上げたのは、2013年4月の国連人権条約委員会の社会権規約委員会です。政府が「拉致問題に進展がない」ことを理由としたことから、審査では「日本人を拉致したことは恐ろしい犯罪ですが、朝鮮学校に通う子どもとは何の関係もない」、教育を受ける権利を侵すことになるとして、是正勧告が出されました。2014年8月の人種差別撤廃委員会でも、朝鮮学校に対し就学支援金による利益が適切に享受されること、ユネスコ教育差別禁止条約への加入検討も勧告されました。

 

ところで、このたび2025年度予算を巡る審議の過程で、自公両党と日本維新の会の折衝がおこなわれ、日本維新の会の提案で高校無償化の拡大措置(2014年導入の所得制限撤廃を含む)が合意され、予算化される形勢となったことが報じられました。従来2010年の無償化措置の恩恵をうけていた高校生に対して一層手厚い支援措置がなされるようです。このことは教育の無償化をさらに進めることで、慶賀すべきことであります。

 

しかしながら、広く一般の日本人高校生、多数の外国人学生に対してすでに実施されている高校無償化措置をさらに手厚くするのであれば、従来の措置から排除してきた朝鮮高校の生徒たちに対する差別措置をやめ、この人々の高校進学にも当然適用する必要があると考えるべきです。現在在日朝鮮人の教育機関については、高校のみならず、幼稚園から大学校まで、全て教育支援措置の対象外とされています。この機会に朝鮮高校を手始めに教育無償化措置の対象に加えることが望まれます。このままでは、目下石破内閣がめざしている日朝政府間交渉再開もおぼつかないことは明かです。二重の意味において国益をそこなう施策を、これ以上つづけることは許されません。

Change.org署名 https://chng.it/6996ZWYvGG

よびかけ人

田中 宏(一橋大学名誉教授)、伊勢崎賢治(東京外国語大学名誉教授)、板垣竜太(同志社大学教授)、上野千鶴子(東京大学名誉教授)、内田雅敏(弁護士)、内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)、岡本厚(元雑誌『世界』編集長)、康成銀(朝鮮大学校朝鮮問題研究センター研究顧問)、小林知子(福岡教育大学教授)、外村大(東京大学教授)、前川喜平(元文科省事務次官)、マエキタミヤコ(サステナ代表)、森本孝子(朝鮮学校無償化排除に反対する連絡会共同代表)、矢野秀喜(強制動員問題解決と過去清算のための共同行動)、吉澤文寿(新潟国際情報大学教授)、和田春樹(東京大学名誉教授)

 


2025/3/13【声明】戦争と植民地支配で傷つけられた人間の尊厳の回復を求めて  ~ 戦後 80 年・日韓基本条約締結から 60 年を迎えて~ 

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20250330声明賛同メッセージチラシ.pdf
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4.11 院内集会のご案内

強制動員問題は終わったのか?原告遺族 は 訴 え る 

 

 2025 年4 月 11 日(金) 16:00 ~ 18:00 (開場 15:30)

衆議院第一議員会館大会議室 (地下1階)

会場参加 もしくは Zoom ウェビナー

申込フォームより参加申込をお願いします。

https://forms.gle/WoRvMEbvJzz4oeqF6

会場:250名まで Zoom:500名まで 連絡先: [email protected]

電話:090-2466-5184 (矢野)

参加費 : 無料、ただし、賛同金(1口1,000円)のご協力をお願いします

主催 : 強制動員問題解決と過去清算のための共同行動

https://181030.jimdofree.com/

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【声明】

戦争と植民地支配で傷つけられた人間の尊厳の回復を求めて 

~ 戦後 80 年・日韓基本条約締結から 60 年を迎えて~ 

  

 

 

アジア・太平洋戦争が終わり今年で80年を迎えます。

 日本は柳条湖事件(1931年)以降、中国侵略からアジア・太平洋地域へと戦争を拡大し、その結果、中国で1000万人以上、インドネシア、ベトナム、インド、フィリピン、朝鮮等アジア・太平洋諸国では併せて約900万人以上といわれるほど多くの人々を犠牲にしました。他方、大規模空襲、沖縄戦、広島・長崎の原爆投下を受け、国内外で日本人も310万人(軍人・軍属230万人、民間人80万人)が亡くなりました。「帝国国防方針」で「国家戦略」を「満州、大韓帝国に扶植した利権と東南アジア・中国に拡張しつつある民力の発展の擁護・拡張」と定め、日清・日露戦争からアジア・太平洋戦争へと戦争を重ねてきたことが、このような惨禍を招きました。このことは、「日本を守る」と言いつつ軍備を増強し軍需産業を進展させることが、悲惨な結果を生むことを私たちに示しているのではないでしょうか。

 

今年は日韓基本条約締結(1965年)から60年を迎えます。

 日本は、1910年韓国併合条約により朝鮮を植民地とし、日本の統治下に置きました。そこでは、行政・立法などを分離せず、朝鮮総督府が軍隊や警察を使って統治するという専制政治を行いました。その下で、土地や米などの生産物を奪い、朝鮮人が自決権に基づき独立を求めることを抑圧し、日本への同化を強制しつつ、参政権をはじめとする政治的な権利を十分に与えないなどあらゆる分野で朝鮮人を差別しました。戦時中には、「総力戦」遂行のため、「帝国臣民」として戦争に動員しました。日本の朝鮮に対する植民地支配は、朝鮮の人々の尊厳を傷つけたのです。

 植民地支配を受けた朝鮮の人々の尊厳が傷つけられたことは、重大な人権侵害です。本来、日本は終戦後に朝鮮の人々の尊厳を回復すべきでした。ところが、1965年の日韓基本条約は、韓国併合条約が「もはや無効である」と確認したにとどまりました。日本は植民地支配の不法を認めず、反省、謝罪も表明しませんでした。また、同条約では、韓国政府を朝鮮半島の「唯一の合法政府」と規定し南北分断に加担することになりました。その後も、朝鮮の人々の尊厳の回復や差別意識の払拭が十分にされずにその影響が今日にまで及び、新たな差別が生じています。また、日本はいまだに朝鮮民主主義人民共和国とは国交を結んでいません。これらの事実は、日本が朝鮮植民地支配の過去に向き合わず、それを克服しきれていないことを示しているのではないでしょうか。

 

戦争及び植民地支配で生じた人権問題の象徴のひとつが朝鮮人の強制連行・強制労働です。

 日本の植民地支配の下、朝鮮の人々は、甘言で釣られたり騙されたりして、自分の意に反して日本企業へ連行され(強制連行)、厳しい監視の下、長時間働かされ(強制労働)、命を失う者もいました。朝鮮の人々は、奴隷のように扱われ、生命、自由及び幸福追求や、民族としての権利が侵され、人間の尊厳が奪われるという重大な人権侵害を受けました。それに対して日本企業は人権を回復すべき責任を負います。

 また、強制連行・強制労働は、戦争による軍需産業での人手不足を補うために日本政府が立てた労務動員計画及び国家総動員法・国民徴用令などに拠り行われたのですから、当然日本政府に責任があります。人権を尊重し擁護すべき責任を負う日本政府は、自ら人権を回復するとともに、日本企業に対して、人権回復を働きかけるべきです。

 

日本政府や日本企業は人権回復のため何をすべきでしょうか。

 日本政府及び日本企業が責任を果たすためには、被害者の要求に誠実に向き合うことが大切です。

被害者らは、人権侵害の事実と責任を認め、謝罪し、謝罪の証として賠償し、再発防止のため必要な措置を求めています。それを実現するために、日韓両国の裁判所に対し、日本企業を被告として、不法行為に基づく損害賠償の訴えを提訴した被害者もいました。裁判は今も続き、たたかいは親から子へと引き継がれています。

 この訴えに対し、韓国の裁判所は、強制連行・強制労働の事実を認めて違法と判断し、日本企業に対して賠償金の支払いを命じました。ところが、日本企業は賠償金の支払いを拒否しています。このような対応は、法の支配の理念や、企業は人権尊重を確保すべきであるという国連の「ビジネスと人権の指導原則」に反しているのではないでしょうか。

 他方、日本の裁判所は、日韓請求権協定により、「裁判上訴求する権能」(裁判所に訴えを求める権能)を失うと判断し、被害者の請求を棄却しました。しかしここで注目すべきは、日本の裁判所も、日本企業の人権侵害行為といえる事実と責任の発生を認めたことです。人権尊重を確保すべき責任を負う日本企業は、日韓両国の裁判所がともに認めた人権侵害行為の事実と責任を自ら認めて、自発的にその責任を果たすことが求められています。

 この点、中国人の強制連行・強制労働事件について、日本の最高裁判所は、裁判上請求できないが請求権は消滅していないとし、自主的に企業が問題を解決するよう附言しました。日本企業はこれを受けて、被害者との和解に基づき加害事実を認め、謝罪し、謝罪の証として償い金を支払い、記憶継承に必要な措置を行い、侵害された被害者の人権回復を図りました。これは一つの解決方法として参考になるのではないでしょうか。

 なお、韓国国内では、強制連行・強制労働の被害者らに対して財団から金員が支払われていますが、それが支払いを拒絶している日本企業の賠償金支払債務への充当といえるのか疑問です。

 

平和を守り人権が尊重される社会を築くために今何が求められているのでしょうか

 今日、朝鮮人の強制連行・強制労働(徴用工)問題は、日韓の国家間の問題とされています。しかし、この問題の本質は、一人ひとりの人間(個人)の尊厳を回復するという人権問題であり、戦争準備・遂行の過程で生じた平和に関わる問題でもあります。この平和と人権に関わる強制連行・強制労働問題に対して、80年以上の長きにわたり、日本政府や日本企業が、被害者に対して人権侵害の事実と責任を認めておらず、謝罪や賠償をしていないことは極めて深刻です。

 「台湾有事」「北朝鮮脅威」などが煽られて軍備が増強され、今も朝鮮人などへの差別的言動、ヘイトスピーチがあとを絶ちません。ふたたび過ちを繰り返さないためにも、先の戦争及び植民地支配下での人権侵害、とりわけ強制連行・強制労働問題に誠実に向き合い、傷つけられた人間の尊厳などの回復を通して国境を越えて市民間の信頼関係を構築することが求められているのではないでしょうか。

 私たちは、平和が守られ、人間の尊厳や人権が尊重される社会を築くために、戦後80年以上もの長きにわたり問われ続けている朝鮮人の強制連行・強制労働問題の解決をめざします。

 

2025年3月13日

 

 

〈声明呼びかけ人〉

 青波 杏(小説家)、足立 修一(弁護士)、阿部 浩己(明治学院大学教授)、殷 勇基(弁護士)、

鵜飼 哲(一橋大学名誉教授)、内田 雅敏(弁護士)、太田 修(同志社大学教授)、大森 典子(弁護士)、岡 真理(京都大学名誉教授)、勝村 誠(ウトロ平和祈念館館長)、加藤 圭木(一橋大学教授)、加藤 直樹(ノンフィクション作家)、川上 詩朗(弁護士)、在間 秀和(弁護士)、申 惠丰(青山学院大学教授)、高橋 哲哉(東京大学名誉教授)、高村 薫(小説家)、張 界満(弁護士)、崔 善愛(ピアニスト・『週刊金曜日』編集委員)、外村 大(東京大学教授)、中沢 けい(小説家・法政大学教授)、中村 一成(ジャーナリスト)、平岡 敬(元広島市長)、吉澤 文寿(新潟国際情報大学教授)

 

 


2025/1/20 2025 年、日韓条約 60 年を期して、日韓条約の解釈を統一し、 日朝国交正常化交渉を再開しよう

日韓条約60年にあたる2025年の初め1/20、研究者らによる声明発表の記者会見が衆議院議員会館で開催されました。

1. 動画

「日朝国交交渉20年検証会議」チャンネル https://youtu.be/HrDf8_YpPuk

「和田春樹」チャンネル https://youtu.be/tXN7t46RvNE 

2. 声明への賛同署名を集めていますので、フォームへ賛同入力をお願いします。https://forms.gle/cq7tEDVr78Mefzox8


<呼びかけ>

2025 年、日韓条約 60 年を期して、日韓条約の解釈を統一し、 

日朝国交正常化交渉を再開しよう 

 

  2024 年末、韓国では、支持率が 10%台に落ち、政治的に孤立した尹錫悦大統領が「非常戒厳」というクーデタまがいの暴挙を起こしました。しかし、国会議員と市民はわずか数時間で尹大統領のクーデタを終わらせました。動員された兵士たちが市民に銃を向けることもありませんでした。ここに、40 年近く続いて社会の隅々まで根を張った韓国民主主義の底力を見ることができます。私たちは、韓国の市民たちの勇気と行動力に共感し、称賛し、心からの連帯を表明します。 

 

1. 日韓基本条約の条文解釈を統一しよう 

 折しも、2025 年は、日本の敗戦 80 年、日韓条約締結 60 年に当たります。この 60 年の間に、韓国は民主化を達成し、経済的にも目覚ましい発展を遂げました。日韓間では人、文化、経済の交流が深まり、対等で豊かな関係が作られつつあります。今、両国は 60 年前とはまったく違う状況の中にあります。しかし、両国間には依然として植民地支配に根ざす深刻な問題が未解決なままに残っています。 

 

(1)日本側は 1910 年「併合条約」についての解釈(第 2 条)を改めること

  その大本の原因は、1965 年の国交正常化に当たって締結された日韓基本条約*の条文解釈が両国間で分れたままにあることです。同条約第 2 条は日韓関係の過去に関する条文ですが、「正文」の英文では、以下のように規定しています- 

 “It is confirmed that all treaties or agreements concluded between the Empire of Japan and the Empire of Korea on or befor e August 22,1910 are already null and void.” 

  「1910 年 8 月 22 日」とは韓国併合条約*の調印日ですが、韓国側は併合条約とそれ以前の日韓間のすべての条約・協定は源泉無効(null and void)だと主張しました。併合条約は、韓国皇帝が統治権を日本国天皇に「譲与」し、天皇はこれを受諾し、韓国を併合する、とした条約でした。韓国は、これは偽りであり最初から無効であったと主張する条文を提案しました。日本はこれに抵抗し、「already」という一語を条文中に入れることを条件に認めました。そして、日本は正文を「もはや無効であることが確認される」と訳し、併合条約は「有効」であり、「合意」により韓国を併合したが、韓国が 1948 年に独立国家になったので、併合条約はいまは無効となったのだと主張しました。日韓は結局、第 2 条について、それぞれの解釈を取ることになり、今日にいたっているのです。

 つまり、日本側は日韓基本条約締結時には朝鮮植民地支配を正当化し、謝罪を拒み、反省しなかったということです。それが禍根を残しました。 

 

  21 世紀も 4 分の 1 を過ぎた今、前世紀の帝国主義時代の併合を正当化する意味はどこにあるでしょうか。日本も遅きに失したとはいえ、村山富市総理大臣談話*(1995)においては、「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛」を与えたとし、その「歴史の事実を謙虚に受け止め」た上での「痛切な反省の意」と「心からのお詫びの気持ち」が 表明されました。そして、このような反省と謝罪の姿勢に基づいて、小渕恵三総理大臣と金大中韓国大統領の日韓パートナーシップ宣言*(1998)や小泉純一郎総理大臣と金正日国防委員⾧の日朝平壌宣言*(2002)が出され、日本と朝鮮半島の間に新しい関係が開かれようとしました。さらに菅直人総理大臣談話*(2010)では、植民地支配が「意に反して行われた」事実を認め、それにより韓国民は「国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられた」とまで述べたのです。いわば日韓条約第 2 条の解釈において、日本側が韓国側に近づいたのです。これが日韓、日朝関係の基調とされるべきでした。 

  しかし、2018 年、強制動員被害者の起こした訴訟で韓国大法院が出した判決に対し、当時の安倍晋三政権はそれを「国際法違反」と非難、さらに強制動員被害者を「旧朝鮮半島出身労働者」と呼んで、戦時動員における人権侵害を否定しました。日本の植民地認識は 60 年前に戻ってしまったかのごとくでした。安倍政権の「逆流」により日韓関係は最悪の状況に陥りました。  

 このような事態は、2022 年に登場した韓国の尹錫悦政権が日本の主張をほぼ丸呑みする「解決策」を提起し、ようやく「修復」されました。しかし、日本の過去認識が 60 年前のままでは、両国民の真の和解と協力が成り立つことはありえません。 

 

(2)韓国側は韓国が朝鮮半島「唯一の合法的な政府」との解釈(第 3 条)を改めること 

 日韓基本条約の条項については第 2 条だけではなく、第 3 条についても日韓間で解釈が分かれています。日韓基本条約第 3 条は、正文では以下のように規定しています- 

 “It is confirmed that the Government of the Republic of Korea is the only lawful Government in Korea as specified in the Resolution 195 (III) of the United Nations General Assembly.” 

  この条項を韓国は「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(Ⅲ)に明らかに示されているとおり朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される」と訳しました。そして、韓国が朝鮮半島全域における唯一の合法的な政府だと主張したのです。 他方、日本は、国連総会決議自体は認めつつ、韓国の統治権はあくまで国連監視下で選挙が実施された南半部に限定されると主張したのです。 

 

 その後の歴史的な経過は、日本側の解釈が正当なものであったことを示しています。 

 1988 年、民主化後、盧泰愚大統領は「7・7 宣言」を出し、韓ソ、韓中の国交樹立と並んで、朝日、朝米の国交樹立を呼びかけました。1991 年には、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国が国連に同時加盟するにいたりました。いまでは朝鮮半島に二つの国家が存在していることを誰も否定することはありません。 

 

 日韓条約 60 年を迎えるに当たって、同条約の基本的条項をめぐるこのような両国間の解釈の相違は正されるべきです。そこには植民地主義と朝鮮戦争-冷戦の影響が色濃く反映しているからです。これを克服していくことが、日韓関係を発展・深化させ、両国民の友好の増進につながることは明らかです。それはまた、日本と朝鮮半島の間の平和構築に資することも確かです。 

 

  韓国では 2025 年に新しい政権が発足し、日韓条約 60 年を機に、日韓首脳会談も開催されると思われます。その際、両国は日韓条約の解釈の統一を協議し、第 2 条の解釈は韓国側の主張を採用し、第3 条の解釈は日本側の主張を採用することにしたらどうでしょうか。 

 石破首相は、日韓条約 60 年に当たり、1990 年代以降に発出し、日韓・日朝間で交わした植民地支配認識を再確認、とりわけ「菅直人総理大臣談話」を継承すると宣言すべきしょう。こうした協議と宣言が、両国の関係を根本的に改善し、次なる発展の礎となると私たちは考えます。 

 

2. 日朝国交正常化交渉の再開を 

 もうひとつなすべきことは日朝国交正常化交渉の再開です。日韓基本条約で、日本は韓国との国交を正常化しましたが、植民地から解放された朝鮮半島にうまれた二つの国家のうち、北半分に当たる朝鮮民主主義人民共和国(以下朝鮮)とは、未だに正常な国家関係を確立することができていないのは大きな問題です。 

 金丸訪朝団が扉を開き、1991 年国交正常化交渉が開始されてからも 30 年以上、2002 年小泉訪朝と日朝平壌宣言が壁をのりこえてからも 20 年以上の歳月が経過しています。2006 年安倍首相は「日本人拉致」問題を理由に、日朝国交交渉を打ち切りました。そして 2013 年、高校無償化から朝鮮高校を排除しました。 

 

 ソ連崩壊と中国の改革開放路線の本格化以降、孤立を余儀なくされた朝鮮は、核実験、ミサイル発射を重ねて自前の核武装化を達成しました。2017 年には、米朝戦争になれば、日本にある米軍基地を攻撃するミサイル部隊を配備していることを公表しました。核ミサイルは、日本にとって現実的な脅威です。放置することはできない問題です。 

 

 2006 年以降の経緯を見る限り、圧迫政策の失敗は明らかです。国交正常化交渉を再開してこそ、拉致問題解決の道も開かれます。同時に朝鮮との緊張関係も緩和され、信頼関係も醸成されていくでしょう。そもそも朝鮮は国連にも加盟し、世界 160 カ国と国交を結んでいるのです。 

 

 2023 年 9 月国連総会で、岸田文雄首相(当時)は日朝首脳会談を呼び掛けました。2024 年 1 月、能登半島地震の際、金正恩国務委員⾧は岸田首相に見舞いの電報を送ってきました。2 月、金与正党副部⾧は日本との首脳会談の可能性に言及しました。日朝交渉を再開する可能性はあると言えます。 

 日朝国交正常化は、地域の緊張を和らげ、平和醸成に資するものとなるでしょう。韓国市民の運動からも、米朝、日朝の国交を望む声が上がっています。日本は平壌宣言に立ち返り、諸懸案の解決、過去の植民地支配の清算に向けて日朝国交正常化交渉を再開することが必要です。 

 

 敵対から和解へ、対立から協力へ、対等で相互を尊重する精神こそが、真の、そして末永い友好を築く基礎になると私たちは信じます。ウクライナの戦争、ガザの戦争と虐殺を見れば、どのような理由があれ、戦争は決して始めてはならないことが分かります。 

 

 敗戦 80 年、日韓条約 60 年である 2025 年を、朝鮮半島やアジアに生きる市民とともに平和を築く努力をする年にしていきましょう。 

 

 2025 年 1 月 20 日 


 (発起人) 

庵逧由香(立命館大学教授) 石坂浩一(立教大学兼任講師) 伊勢崎賢治(東京外国語大学名誉教授) 板垣竜太(同志社大学教授) 伊地知紀子(大阪公立大学教授) 内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授) 内田雅敏(弁護士) 梅林宏道(ピースデポ特別顧問) 太田修(同志社大学教授) 岡本厚(雑誌「世界」元編集⾧)小田川興(在韓被爆者問題市民会議代表) 姜尚中(東京大学名誉教授) 金性済(日韓和解と平和プラットフォーム日本運営委員会書記/キリスト教牧師) 小林知子(福岡教育大学教授) 佐川亜紀(詩人) 佐藤久(翻訳家) 鈴木国夫(市民連合 めぐろ・せたがや 共同代表) 田中宏(一橋大学名誉教授) 崔善愛(週刊「金曜日」編集委員、ピアニスト) 飛田雄一(神戸学生青年センター理事⾧) 平山茂(社会活動家) 古川美佳(朝鮮文化美術研究) 布袋敏博(早稲田大学名誉教授) 水野直樹(京都大学名誉教授) 森類臣(摂南大学准教授) 矢野秀喜(強制動員問題解決と過去清算のための共同行動) 和田春樹(東京大学名誉教授) 渡辺健樹(日韓民衆連帯全国ネットワーク代表) 渡辺美奈(アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)) 

 

-----条約等のリンク------------------------

韓国併合条約(1910) https://x.gd/6y2Rv 

日韓基本条約(1965) https://x.gd/inukT 

村山富市総理大臣談話(1995) https://x.gd/1hpZ4j

日韓パートナーシップ宣言(1998) https://x.gd/sKgPm

日朝平壌宣言(2002) https://bit.ly/42fMsHx 

菅直人総理大臣談話(2010) https://bit.ly/40qcPYy 

 


2024/11/10 2025年日韓条約60年にむけて シンポジウム

「日韓条約の解釈を修正し、日朝国交正常化を!」

11月10日 (日) 14:00開会 (13:30開場)

文京区民センター 3A会議室 (東京都文京区本郷4-15-14)

[申込先] https://forms.gle/VndbHsURAdP8pVkn6

会場+オンライン (zoom) のハイブリッド開催です 。

いずれも事前にお申込ください。参加費 1000円

会場参加をご希望の方のみ、 当日の飛び入り参加も可能です。

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 来年2025年は、日本にとっては敗戦80年、 韓国・朝鮮にとっては日本の植民地支配からの解放80年にあたります。 韓国とは、1965年に日韓基本条 約を結んで国交正常化して60年、両国は交流を重ね、人も文化も経済も豊 かで成熟した関係になりつつあります。 ただ、起点である日韓条約に大きな 問題がありました。 日本は韓国併合と植民地支配を反省しない姿勢のま ま、この条約を結んだからです。 また同じ日本の植民地とされた朝鮮民主主 義人民共和国とは未だに国交がありません。 もっとも近く、歴史的関係も深い隣国との関係がこのままでいいのか、日 韓条約60年を機に考えたいと思います。

 

【報告】

太田 修 同志社大学教授

吉澤 文 新潟国際情報大学 教授

和田 春樹 東京大学名誉教授

【討論】

金 恩貞 公益財団法人ひょうご震災記念 21世紀研究機構主任研究員

内海 愛子 恵泉女学園大学 名誉教授

田中 宏 一橋大学名誉教授 

 

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呼びかけ

2025年、 日韓条約60年を機して、日韓条約の解釈を統一して

日韓国交の基礎をかため、日朝国交正常化を実現しよう

 

2025 年は、日本の敗戦80年、 日韓基本条約締結 60年 に当たります。この60年の間、 様々なことが起き、解決でき ない問題もいまなお存在していますが、かつて植民地支配をした日本と植民地とされて辛酸をなめた韓国との間には、 人びとの交流も文化の交流も経済の関係も劇的に増え、平等 で豊かな関係が作られつつあります。 しかし、やはり日本の 植民地とされ辛酸をなめた朝鮮半島の北部一一朝鮮民主 主義人民共和国との間には、いまなお国交がありません。 これはきわめて異常な事態です。

2025年、この年に、私たち日本の市民が、 アジアの平和の ためになすべきこと、なさねばならないことがあります。 以下 の2点です。

 

(1) 第一は、60年前に国交正常化した韓国との間の問題 です。日韓基本条約の調印にあたり、日本は1910年の韓国 併合、 朝鮮植民支配を反省せず、謝罪もしない姿勢でのぞ みました。 日韓基本条約の第二条は、日本文では「千九百十 年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結 されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが 確認される。」 となっており、日本側は、併合条約は有効で、 1948年韓国が誕生したときに無効になったと確認しただけ である、と解釈しています。

しかし、この条項を提案した韓国側英文の原案は 「It is confirmed that all treaties or agreements concluded between the Empire of Japan and the Empire of Korea on or before August 22,1910 are null and void」 でした。 これに最終的に「already」 という一語をくわえて 「already null and void」として合意が成立したのですが、 韓国側は第 二条韓国文を 「すでに無効であることが確認される」とし、 1910年併合条約は当初から無効・不成立であるとの文意は 変わらないと主張してきました。 併合条約は韓国皇帝が 統治権を日本の天皇に譲渡すると申し出たので、天皇がそれ を受け取ることを承諾し、韓国を併合することにしたという 条約ですが、 そんなことはいつわりだ、最初から無効である ことを確認したのが基本条約第2条であるというのが、韓国 側の一貫した主張でした。

 

21世紀も4分の1を過ぎたいま、100年以上前の帝国 主義時代の併合を正当化する意味はどこにあるでしょうか。

日本も遅きに失したとはいえ、 河野談話 (1993) 細川談話 (1993), 村山談話 (1995) 日韓パートナーシップ宣言 (1998) などで、 植民地支配をしたことで朝鮮の人びとを苦し め、損害をあたえたことを認め、 謝罪しています。 菅談話 (2010) では、 「政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々 は、その意に反して行われた植民地支配によって」と記して、 併合条約が正当なものではなかったことに触れています。 条約の基本的な条文の解釈を、日韓で正反対におこない、 それで60年間放置してきたのは、まさに異常という他ありま せん。日本政府は、第二条の解釈として、韓国側の解釈を 最終的に受け入れるべきときです。

なお日韓条約の第三条 「大韓民国政府は、 国際連合総会 決議第百九十五号 (II) に明らかに示されているとおりの 朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される」 については、朝鮮半島全域を韓国とする韓国側の解釈はすで に成立しえないことが明らかで、国連の監視下で選挙がおこ なわれた南半部に限定されるとする日本側の解釈が正当な ものと認められるべきであることも付言します。

 

(2) 第二は、 植民地から解放された朝鮮半島にうまれた二 つの国家のうち、 大韓民国だけを認めて、 朝鮮民主主義人 民共和国と正常な国家関係を確立することが出来ず、 敗戦 後80年もの間、時を空費してきたことを反省しなければなり ません。 金丸訪朝団が国交正常化交渉を開始の約束をして から36年、 小泉訪朝と日朝平壌宣言から23年、いまだに 国交正常化の兆しさえないというのはどうしたことでしょう。 米ソ冷戦の時代は遠くなり、ポスト冷戦時代も終わりつつあ る中で、両国の懸案——拉致問題も核・ミサイル問題も、 経済協力問題も在日朝鮮人の処遇問題も一は、国交を正 常化し、互いに存在を認め合ってこそ解決の糸口を探ること が出来るのです。新たな危機の時代が始まりつつある今だ からこそ、 日朝国交正常化に踏み切るべきだと私たちは確信 します。 これ以上、時間を空費することは許されません。

 

私たちは日本の市民として、 東アジアの平和の基礎となる 以上の2点について、2025年の実現を目指し、 活動していき ます。 そのため、 2024年の秋、 「東アジアの平和を考える」 連続講座を行います。

2024年10月1日

石坂浩一  内田雅敏  内海愛子  岡本厚  鈴木国夫  田中宏  平山茂  矢野秀喜  和田春樹

 


2024/3/25 強制動員 韓国原告(家族・遺族)の声を聞くつどい

(ご案内) 

2023年12月から2024年1月にかけて、韓国大法院は9件の強制動員訴訟の判決を出しました。いずれも被害者の請求を認め、被告日本企業4社に賠償を命じました。

 これに対し、政府、被告企業は依然として、「問題は請求権協定で解決済み」と言い、判決を履行していません。「韓国政府が『解決策』に基づき処理するものと考えている」と他人事のように振る舞っています。

 しかし、韓国政府の「解決策」(第三者弁済)を受入れず、あくまで被告企業の謝罪と賠償を求める原告は存在します。第三者弁済を拒む原告にそれを強要することはできないのです。

 また、日立造船訴訟では、被告日立造船が二審の賠償命令判決の強制執行を回避するために納めた供託金を原告が差押え、これを裁判所が認めて原告に渡されました。原告は被告企業から間接的ではありますが賠償金を受け取りました。

 日本国内では、韓国政府が打ち出した「解決策」(韓国の財団が被告企業の賠償支払いを肩代わり)で強制動員問題は終わったという認識が広がっていますが、問題は終わってもいなければ、解決もしていません。

 3月25日、韓国から「解決策」を拒否する原告の遺族、家族及び原告代理人(弁護士)、支援者が来日し、被告企業、日本政府への申入れを行います。また、院内集会で強制動員問題の解決を日本の国会議員、メディア、市民に訴えます。

 ぜひこの院内集会にご参加ください。来日する被害者の家族、ご遺家を励ましてください。



2023/5/3 <声明> 「岸田首相は自らの言葉で語れ」

2023年5月3日

-岸田文雄首相の訪韓に当たって- 

声明「岸田首相は自らの言葉で語れ 植民地支配への反省、強制動員被害者への謝罪」 

強制動員問題解決と過去清算のための共同行動

 (https://181030.jimdofree.com/

 

 岸田文雄首相が5月7~8日の日程で訪韓することが正式に発表されました。3月16日に尹錫悦大統領が来日し12年ぶりに日韓首脳会談が開催され、時をおかず今度は岸田首相が5年ぶりに訪韓するシャトル外交の再開です。ただ問題は、岸田首相が訪韓して首脳会談で何を議論するか、です。

 

 3月6日の韓国政府の「徴用工」問題の解決策発表とその後の日韓首脳会談は、実態として日米韓の安保協力体制の立て直し、強化を最優先にして進められていることは明白です。

 しかも、2018年の大法院判決以降最悪の状況に陥ったといわれた関係がようやく隣国同士らしい関係に戻ったとは言われますが、強制動員問題は依然として未解決のままです。大法院判決を受けた15名の原告のうち10名の原告遺族は「日帝強制動員被害者支援財団」の「肩代わり」を受け入れました。しかし、長期間裁判を闘った当事者である生存原告は全員「解決策」を批判し「財団」の給付を拒んでいます。

 

 岸田首相は3月16日の日韓首脳会談の際に「日本政府は1998年10月に発表された『日韓共同宣言』を含め歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」としましたが、過去の植民地支配について自身の言葉では反省と謝罪は述べませんでした。まして強制動員被害者へ慰労、謝罪の言葉をかけることもありませんでした。日韓政府間の関係が進展しても強制動員被害者が置き去りにされたままでは被害者も韓国国民も納得できません。

 

 今回、岸田首相の訪韓の発表を受けて5月2日付の中央日報は「岸田首相が誠意ある呼応をする番だ」との社説を掲げましたが、これは韓国紙に言われて実行することではありません。

 今回の訪韓を機に岸田首相は自らの言葉で過去の植民地支配に対する反省と謝罪を表明すべきです。

同時に、強制動員の歴史的事実を認め、被害者に直接謝るべきです。そうしてこそ強制動員問題解決に向けての一歩が踏み出されます。「確認した史実から教訓を得て、より良い明日を模索するという意味」(金大中)での未来志向の日韓関係が始まります。

 私たちは岸田首相の訪韓がそのような結果を生むことを求めます。

 


2023/4/3<声明> 日韓関係の改善について

「韓国は敵なのか」声明世話人

 

 2018年以来の懸案であった「徴用工」問題に対して関して韓国の尹錫悦政権が、政府傘下の「財団」が被告日本企業の「肩代わり」をするとの解決策(第三者弁済)を出しました。これにより日韓政府関係は急速に改善に向かっています。

 首脳会談の開催、シャトル外交の復活、日韓安保対話の再開などが矢継ぎ早に公表され、それに伴って、日本の対韓輸出規制措置も緩和されました。安倍政権のこの措置は、経済的な方法によって相手国に圧力をかける「経済制裁」に他ならず、韓国から国民的な反発を受けたものでした。2019年7月、私たちが「韓国は敵なのか」声明で問いかけたのも、この安倍政権の施策が敵国に対するような措置であったからです。その解除自体はもちろん歓迎すべきでしょう。

 

 韓国では、野党、市民運動がこの解決策に反発、世論調査でも半数以上の国民が反対している一方、日本では政府、メディアは手放しの歓迎ぶりです。米国も政府、議会ともに評価しています。このそれぞれの反応の中に、この解決策が基本的に「日本の主張に沿った」ものであり、韓国政府の「前のめり」の姿勢によることを示しています。 

 隣国との関係がいつまでも悪いままでよいはずはなく、両国の外務当局が、それぞれの国内政治に苦慮しつつ協議し続けた努力の結果だと考えます。

 私たちは、韓国政府の施策について論評する立場にはありません。

 ただ、日本政府の姿勢についてこのままでいいのか、この解決策が、「徴用工」問題の解決につながるのか、隣国との深い和解に結びつくのか、大いに疑問を持ち、懸念を持っていることを表明せざるを得ません。

 

 第一は、大法院判決を受けた当事者である日本企業が何も関与しないということです。被告企業は「コメントする立場にない」として、被害者に謝罪もしなければ、賠償のための金も出しません。これでは被害者の納得は得られません。また、日本政府、とりわけ岸田総理は、自分の言葉ではっきりと植民地支配への反省と謝罪を述べませんでした。すなわち、「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」と説明しただけでした。

 岸田総理のこの表現で、植民地支配への反省と謝罪、「歴史への真摯な態度」の表明と受け止める人はいないでしょう。

 私たちは、これまでくり返し、加害の側が被害者の側の「心に届く誠実な謝罪」を示すことが、両国民の和解にいたる前提であると述べてきました。

 「加害の歴史を清算するとは、①加害者が加害の事実と責任を認めて誠実に謝罪し、②その証として何らかの金銭的補償を行い、③過ちを繰り返さないために問題を後世に伝えるということ」である、と(2021年3月「慰安婦問題の解決のために」)。そして「この三つの関係が大切です。①②とともに、③を誠実に継続実行することによって①②の謝罪が真摯なものであることが被害者・遺族に理解されるようになるのです。」と。

 強制動員の事実を認めず、誠実な謝罪をしない(あるいはできるだけ謝罪を薄めたいとする)ことは、その責任を認めていないことに他なりません。今回の岸田総理、日本政府の姿勢、被告企業の対応は、禍根を残したと考えます。

 

 第二は、日韓の和解が、対朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、そしてひいては対中国の安保政策を優先してなされたことです。米国の歓迎の背後には、日米韓を結び、北朝鮮(そして中国)を封じ込める米国中心の軍事戦略があります。GSOMIYA(軍事情報包括反故協定)の正常化はその一環です。

 ひとつの国との和解が、もうひとつの国への敵対に基づいているのは健全なことではありません。とりわけ、日本にとって北朝鮮は、和解しなければならない相手でもあります。2002年の小泉総理訪朝と「日朝平壌宣言」は両国和解の第一歩となりましたが、その後20年間、国交正常化にはいたらず、交渉は断絶し、危機はより深まっています。

 クリントン政権時代、北朝鮮との戦争は、あまりに巨きな被害をもたらすがゆえに不可能というシミュレーション結果が出ています。その頃と比較しても、戦争の惨禍はさらに大きなものになることは明らかです。軍事的圧力で問題を解決することはできないのです。

 

 2018年、米朝、中朝、南北、ロ朝間で首脳会談が行われる中で、唯一対話できなかったのが日本でした。日本は、この地域で対話より緊張を選んでいると見なされているのではないでしょうか。あるいは、この地域で「主体」と見なされていないのでしょうか。いずれにしろ、安倍外交のこうした負の遺産の反省と是正が求められています。

 対北朝鮮において、国交の正常化、和解の促進と東アジア地域の安全保障システムの構築が求められていると私たちは考えます。韓国に対して植民地支配を謝罪し個別的な謝罪要求や補償に応えることは、今後の北朝鮮との対話に向けた信頼形成の一助となるはずです。

 

1998年、金大中大統領が来日し、小渕総理との間で「日韓パートナーシップ宣言」に署名したとき、両首脳間で永住外国人に地方参政権を認めることが確認されました。日本では1998年以降「永住外国人地方選挙権付与法案」が幾度も提出されましたが、いまだ成立を見ていません。一方韓国では、2005年に法改正が成立し、翌年の統一地方選挙から外国人の投票が実現し、すでに4回を重ねています。過去四半世紀、人権や人びとの権利について、韓国は前に進み、日本は立ち止まったままです。このような日本の状況を、私たちは残念に思います。前に進もうとするかどうか、両国の姿勢の差が、このたびの問題解決への姿勢にも現れているのではないでしょうか。

 

政府間では対立していても、日韓両国民の間では様々な交流が活発になっています。お互いの国や国民や文化が好きで、旅行で行き来する人も多く、その意味では国民レベルでは政府より和解は進んでいたともいえるでしょう。コロナ感染が終わりつついま、さらに訪問や交流をする機会も増えると思います。KポップやKドラマから、歴史を学んだ日本の若い世代も現れています。私たちは、未来は明るいと希望をもっています。

 思えば、国交正常化以来、何度「日韓関係改善」「新日韓関係」が叫ばれたことでしょう。その原因を相手にだけ見いだす思考をもはや止めるべきときだと考えます。

 2023年4月3日

 

「韓国は敵なのか」声明世話人

石坂浩一 内海愛子 内田雅敏 岡本厚 鈴木国夫 田中宏 矢野秀喜 和田春樹         


2022/11/30 被害者が生きているうちに解決を!強制動員問題

韓国で今年5月に尹錫悦政権が誕生して以降、 日韓関係改善に向けて両政府間で協議が重ねられています。 その中で、 “懸案” である 「徴用工」 問題についても 「早期解決に向けて両国間の協議を継続していく」 ことを合意しています。

 しかし、 日本側は依然として 「韓国側に “ボール” はある」、 「韓国側が責任を持って対応すべき」との態度をとり続けているように思われます。 これで強制動員問題を被害者が納得するかたちで解決することができるでしょうか。

 韓国政府は 「拍手は片手ではできない (孤掌難鳴)」 と言い、 「日本側の誠意ある呼応が必要」 と訴えています。 この問題の発端が戦時下の強制動員にあったことを想起するならば、 ある意味当然の主張です。 日本は今こそ過去に誠実に向き合い、 被害者の同意を得られるような解決をめざしていくことが求められています。

 そのためにはこの国で、 「徴用工」 問題を解決するのは今をおいてない、 という世論を形成していく必要があります。 その取り組みの一環として、 国会議員、 市民が集い、 幅広く意見を交わしました。当日の記録をYouTubeでご覧ください


 

 強制動員問題解決に向けての共同声明 

「被害者が生きているうちに解決を! 今こそ謝り、つぐなうとき」

  2022 年 11 月 30 日

 〔呼びかけ〕 強制動員問題解決と過去清算のための共同行動

 

 2018 年秋、韓国最高裁(大法院)は、強制動員の被害事実を認め、日本企業に賠償を命じる判決を出しました。しかし、日本政府はこの判決を 1965 年の日韓請求権協定で「解決済み」であり「国際法違反」と決めつけ、韓国に対して経済報復をしました。判決から4年が経過しましたが、判決は履行されていません。

 

 現在、韓国政府は問題解決に向け、被害者側の意見を聞き取りつつ、解決策を検討しています。関係財団に基金を設置し賠償支払いを「肩代わり」させる案も示されていますが、日本側に「片手で拍手はできない」と「誠意ある呼応」を求めています。韓国側が求めている呼応とは、日本の企業の謝罪と「財団」(基金)への出資です。しかし、日本政府はそれに応答する姿勢を示していません。2021 年には歴史教科書から朝鮮人強制連行、強制労働の事実を削除するに及んでいます。このような対応では問題は解決しません。

 

 ところで、日本の政権は 1995 年の村山談話以後、朝鮮植民地支配に対する反省と謝罪を表明してきました。1989 年3月、竹下登首相も国会で「日本政府及び日本国民は、過去における我が国の行為が近隣諸国の国民に多大の苦痛と損害を与えてきたことを深く自覚して、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って平和国家としての道を今日まで歩んできた」。「そのような自覚と反省は、歴史的にも地理的にも我が国と最も近接しております朝鮮半島との関係においても、とりわけ銘記さるべきもの」と述べています。過去の朝鮮人強制連行訴訟では日本製鉄、日本鋼管、不二越などの企業が被害者と和解し、金銭を支払った事例もあります。

 

 過去、日本が朝鮮半島の人びとに与えた苦痛と損害、その歴史事実を自覚し、反省するという立場に立てば、韓国側の求めに応ずることは、困難なことではないでしょう。2022 年9月、三菱重工訴訟原告の梁錦徳(ヤン・クンドク)さんは次のように書いています。「お金が目的だったら、私はとっくの昔に諦めていたでしょう。私は日本から謝罪を受ける前に、死んでも死に切れません」。同月、日本製鉄訴訟の原告である李春植(イ・チュンシク)さんも次のように語っています。「補償を受けられなかったため、裁判をしたが、結果だけを受け取った。生きているうちに問題が解決することを望む」と。このような強制動員被害者の声を受け止め、誠実に行動すべきです。

 

 私たちは日本政府、関係企業に訴えます。植民地支配下での強制動員の歴史を自覚し、反省すべきです。「解決済み」の姿勢を改め、韓国の判決を受け入れ、被害者の救済に向け、謝り、つぐなうべきです。

 

 2022 年 11 月 30 日

 〔呼びかけ〕 強制動員問題解決と過去清算のための共同行動

住所:横浜市鶴見区豊岡 20-9 全造船関東地協労組気付

mail: [email protected]   URL:https://181030.jimdofree.com/

〔賛同者・賛同団体〕

 


2021年夏、日韓関係の現状についての私たちの見解

------ このまま放置は許されない ------

2021年8月14日

 石坂浩一、内田雅敏、内海愛子、岡本厚、鈴木国夫、田中宏、矢野秀喜、和田春樹

 

 

 新型コロナ感染に対する愚策の連続、オリンピックの強行開催と感染者の爆発的拡大など、この1年間の日本の有り様は、政治の劣化と衰退の現実を「これでもか」というほど、私たちに見せつけています。日本の行くべき方向、世界の進むべき方向について、何の展望も理念も理想もなく、漂っているのがいまの日本です。何よりトップにメッセージを発したり、対話をする意欲や能力がないのが決定的です。

 

 惨憺たる結果の一つが、国交正常化以来最悪と言われる日韓関係です。

 

■ 「韓国は「敵』なのか」――二年前私たちは敵対の流れに待ったをかけた

 2019年7月、日本政府が半導体製造素材三品目の対韓輸出に関する特別措置を停止した時、私たちは「韓国は『敵』なのか」と問う声明を発しました。これらの措置は、経済的手段をもってする圧力、制裁に他ならないからです。私たちはこの敵対的な措置を撤回し、韓国政府との間で、冷静な対話・話し合いを開始することを求めました。 国内外からも批判の声が起こり、安倍晋三首相(当時)もさすがに立ち止まらざるをえず、同年10月4日には、国会での所信表明演説で、韓国は「重要な隣国」だと言及するにいたりました。しかし、安倍首相はそう言っただけで日韓関係を正常化するためにいかなる努力もはらいませんでした。「実質的な効果は何もなかった愚策」、政権内でこう言われている対韓輸出規制措置は、今日にいたるも継続維持されています。

 

■ 重要な隣国なら、首脳会談を真っ先にやるべきではないか

 深刻な対立関係におちいった日韓関係を打開するためには、首脳同士が会談をもち、話し合うことからはじめるのが当たり前です。安倍首相が健康を理由として辞任して、菅義偉氏が後継首相となったとき、この絶好のチャンスが訪れたと私たちは考えました。2020年9月、私たちは第二の声明『今こそ日韓関係の改善を』を出し、何よりもまず日韓首脳会談の開催を求めました。しかし、菅新首相がまず訪問し会談したのは、ベトナムとインドネシアの首脳であり、続いて米国のバイデン大統領でした。

 

 隣国の大統領との対面を避けつづけてきた菅首相にとって、東京オリンピックの開会式に文在寅大統領が出席する意向を表明したのは、願ってもない機会でした。菅首相は、文大統領と会談して、懸案の解決に乗り出し、関係を改善したいと意欲を表すのが当然でした。ところが、菅首相は、その意欲を最後まで示さず、みすみす貴重なチャンスを見送ったのでした。

 

 日韓間で協議が行われていたとき、日本の在韓公使から、韓国大統領を辱める発言がなされたことが明らかになりました。この不埒な外交官相馬弘尚氏は当然ながら即刻解任されるべきでしたが、ただ帰国命令が出されただけでした。隣国の大統領を侮辱し、隣国の人びとの日本に対する感情をさらに悪化させたこの外交官を日本政府は懲戒処分とすべきでした。

 

 深刻なのは、首相が「重要な隣国」の大統領との会談を避け、この課題から逃げていることが明らかになったことです。首脳会談をもち解決の糸口をつかんで事態を打開するという責任感、解決の意欲をもたないのであれば、そのような首相は任にたえないと判断せざるを得ません。

 

■ 韓国に対して、どうしてそんなに尊大な態度をとれるのか

 2019年以降、日本政府、外務省、メディアの解説者たちは、日韓関係を悪化させたのは韓国の大統領、議会、裁判所、市民運動が、日韓基本条約、請求権協定、2015年慰安婦問題合意で問題が解決されていることを否定して、不当な要求を日本につきつけてくるからである、と主張してきました。「問題は自分たちが解決する」と韓国側が申し出て、はじめて関係改善は図られるというのです。 

 

 どうして、いつからこのような尊大な態度を日本は韓国に対してとるようになったのでしょうか。韓国政府の対応に、混乱もあり一部に不安定さがあったのも事実ですが、日本と韓国のあいだにある歴史問題は、基本的に、日本が韓国併合(1910年)により朝鮮半島を日本の領土とし、そこに住む人々を日本帝国の臣民にさせたことに根源があるのです。日本は、戦後、1965年の日韓基本条約締結の時点では、韓国併合、朝鮮植民地支配について反省も謝罪もしていませんでした。しかし、30年後の1995年の村山富市総理談話において、植民地支配がもたらした損害と苦痛に対して反省し、お詫びを表明するにいたったのです。

 村山談話は、以後のすべての内閣が継承する日本政府・国民の歴史認識の基礎です。加害の事実を認め、反省し、謙虚な態度を貫くことが基本です。日本政府が、現在韓国政府に対して見せている尊大な態度は、村山談話の精神に背くものであり、許されないと私たちは考えます。

 

■ 軍艦島などの展示に関する約束を、ユネスコに批判されても無視している

 ここで私たちが驚くのは、世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」と「産業遺産情報センター」についての問題です。2015年7月、日本政府は、「明治日本の産業革命遺産」のユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産登録に際して、ユネスコの勧告を受け入れ、「日本は、1940年代にいくつかのサイトにおいて,その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと、また、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる所存である。日本は,インフォメーション・センターの設置など、犠牲者を記憶にとどめるために適切な措置を説明戦略に盛り込む所存である」と約束しました。

 

  今年6月、ユネスコが現地調査したところ、この約束が果たされていないことが判明したのです。「産業遺産情報センター」は、植民地朝鮮から朝鮮人たちが意に反して連れてこられ、労働を強制された歴史的事実を否定し、自分たちに都合のよい証言しか採用していませんでした。このため7月22日、ユネスコ世界遺産委員会は、それに強い遺憾を表明し、改善を勧告したのです。しかし、日本政府は、約束不履行に関する指摘を受けても、修正する姿勢を見せていません。まことに尊大で恥知らずな国に成り果てています。

 

■ 日本政府の方が、2015年慰安婦合意を実行していない

 日本政府は、韓国政府がことごとく政府間合意を破っているかのように主張していますが、2015年の慰安婦問題合意についてみれば、合意の内容を矮小化し、歪め、愚弄しているのは日本政府の方だと言わざるを得ません。

 

 今年6月11日、那谷屋正義参議院議員(立憲民主党)が「日韓関係を正常な隣国関係にするための過去の努力に関する質問主意書」を提出し、6月25日、菅総理の「答弁書」が出されました。答弁書は、菅内閣も河野洋平官房長官談話、村山談話を継承していることを明かにし、アジア女性基金の事業についてはその際出された首相のお詫びの手紙を含め、最大限の協力を行ったことを確認しながらも、2015年の慰安婦合意については、出された質問に対して回答することを拒絶したのです。

 

 那谷屋議員の質問主意書の第4項は次のようなものでした。

 「二〇一五年(平成二十七年)十二月二十八日、岸田外務大臣はソウルの地において尹炳世韓国外務部長官と会談し、合意した内容を共同記者会見の席上、次のように発表した。

『(一) 慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。

(二) 日本政府は、これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒す措置を講じる。』」

 

 「菅総理は、この合意をまとめた安倍内閣の官房長官であり、二〇一五年合意の基本的内容を継承しているのは当然であると考えるが、改めて伺いたい。菅内閣としても、二〇一五年合意の際に岸田外務大臣が発表した立場、特に、前述の(一)と(二)の内容を継承しているのか、否か、明らかにしていただきたい。」

 

 これに対して、菅総理の答弁書は次のように述べたのです。

 

 「平成二十七年十二月二十八日の日韓外相会談で確認された慰安婦問題に関する合意については、同会談で岸田外務大臣(当時)が尹炳世韓国外交部長官(当時)と協議を行い、韓国政府としての同合意に対する確約を直接取り付けたものであり、また、同長官(当時)は、同会談後の共同記者発表の場で、同合意を日韓両国民の前で、国際社会に対して明言した。さらに、同合意は、同日の日韓首脳電話会談でも確認された。同合意においては、慰安婦問題が『最終的かつ不可逆的に解決されること』が確認されている。」

 

■ 菅総理は、日韓合意の核心部分を認めることを拒否した

 2015年日韓合意の核心は、日本国総理大臣が「政府の責任をみとめて謝罪」したこと、謝罪のしるしとして「政府予算により、すべての元慰安婦の方々の心の傷を癒す措置を講じる」ことでした。にもかかわらず菅総理の答弁書は、その核心的な内容を確認することを拒否し、その代りに、なんと合意の内容は「慰安婦問題が『最終的かつ不可逆的に解決されること』が確認」されたことだ、と主張しているのです。これでは日本政府は自分で合意の内容を、矮小化し、歪曲していると言わざるを得ません。

 

■ 総理の謝罪を被害者に伝達することによって、日韓合意を誠実に履行することになる 

 日韓合意の核心は総理大臣の謝罪と謝罪のしるしとしての金員の国庫からの拠出です。ところが、日本政府は10億円の政府資金を閣議決定により韓国政府におくったのですが、総理大臣の謝罪は、本人の言葉で表明されることはなく、文書化されて韓国側に渡されることもなかったのです。韓国で慰安婦被害者に治癒金を渡した「和解治癒財団」が、総理大臣の謝罪の手紙を要請したとき、安倍首相が「そのようなことは、毛頭考えていない」と述べて、合意にもとづく和解治癒財団の事業を窮地に立たせたことは広く知られています。

 

 菅総理は、日韓合意を尊重、継承するというなら、日本の総理大臣の謝罪の手紙を慰安婦被害者に届けることを、今からでもやるべきです。

 

 私たちは、2021年3月24日、慰安婦問題についての意見を『共同論文』の形で発表しましたが、その中で次のように提案しました。

 

 「私たちは、日韓両国政府に対し、まず『2015年合意』を再確認し、その合意の精神をさらに高めるための努力を要請します。菅総理は、河野官房長官談話、村山総理談話を継承する政府の立場から、2015年合意の核心部分を再確認し、「政府の責任を痛感して、すべての慰安婦被害者にお詫びと反省の気持ちを表明」した安倍総理の言葉をあらためて文章にして署名し、日本政府を代表する駐韓大使をして、20人といわれる生存慰安婦被害者にその意を届けさせるべきだと思います。」

 

 こうしなければ、2015年合意を誠実に実行したことにならないのです。

 

 文在寅氏は、大統領選挙時には2015年合意反対を掲げました。しかし、2021年年頭記者会見では2015年合意を正式な「政府間合意」と認めました。日本政府が誠実な対応を取るならば、双方の努力で合意の精神を高めていく可能性も残されていると私たちは考えます。

 

■ 慰安婦合意を生かせるなら、そこから徴用工問題の解決へ進むことができます

 徴用工問題は、1965年国交正常化時にどう「処理」されたかを検証することは必要でしょう。ただ、1965年の日韓基本条約締結の時点では、日本は韓国併合、朝鮮植民地支配について反省も謝罪もしていませんでした。もちろん個人補償もしていません。日本の植民地支配下の戦争動員に根源のある被害者の訴えがつづくかぎり、これをどのように救済するかは日韓両政府、日韓両国民が話し合って、道をみつけるほかないのです。慰安婦合意を生かして前進が図られるなら、その延長上に徴用工の問題を取り上げて、両国の関係者の話し合いで解決することができるでしょう。問題解決の原則はすでに明らかになっています。

 

私たちは前述の共同論文において、次のように述べました。

 

「加害の歴史を清算するとは、

①加害者が加害の事実と責任を認めて誠実に謝罪し、

②その証として何らかの金銭的補償を行い、

③過ちを繰り返さないために問題を後世に伝えるということです。」

 

 これは被害を与えたものが被害者に対して為すべき、世界共通の原則です。とりわけ③が大切です。③を誠実に遂行することによって、①の謝罪が真摯なものであることを被害者が理解するのです。①、②をもって歴史問題の終止符とさせてはなりません。謝罪を繰り返すことは不要かも知れません。しかし、「前事之不忘、後事之師」と言い、「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目(ママ)となります」(ワイツゼッカー)との戒めもあります。過去の歴史を継承し、誠実に向き合う姿勢こそが、被害者側の信頼をつなぎとめる要です。

 

■ 重ねて問います「日韓関係は、このままでいいのですか」

 敗戦から七六年目の夏、日本はいまあきらかに危機のなかにあります。コロナ・ウィルスの感染が深刻化するなかで、漫然とオリンピック大会を強行開催した政府が発する空虚な言葉に、人びとは絶望しています。その中で、重要な隣国との関係も見るも無残な状態になり、それが2年も放置されています。

 

 これから両国の政権がどうなろうと、日本の朝鮮植民地支配の歴史を消し去ることはできません。日韓基本条約が孕んでいた構造的矛盾も変わりません。植民地支配の被害者の権利回復と両国の関係改善のためには、冷静な対話と外交協議を重ねること、国民の理解を得ていくこと以外にないのです。

 

 この8月14日、私たちは1991年8月14日に金学順さんが、自らを日本軍「慰安婦」であったとカムアウトされてから30年を迎えます。金学順さんは94年6月、東京地裁で「恥ずかしいのは『慰安婦』であった私ではなく、過ちをきちんと認めず、謝罪もしない日本政府だ」、「大事なのはお金ではなく、日本政府の事実認定と公式謝罪だ」と証言されました。

 

 私たちは、改めて日本政府と日本に住むすべての人々に重ねて問いたいと思います。「日韓関係をこれ以上、放置していいのですか。友好を願っている両国民が、いまのように分断されたままでいいのですか」と。

 

 


2021/7/18  シンポ開催「『慰安婦』問題をどう解決するか」

2021年7月18日、オンライン・シンポジウム「『慰安婦』問題をどう解決するか」を開催し、遠隔地も含めて約130名のご参加をいただきました。

 日本軍「慰安婦」をめぐる問題は、1990年代の元「慰安婦」のカミングアウト以来、解決に向けて様々な努力がなされましたが、30年後のいまも日韓両国間の懸案であり続けています。声明「韓国は「敵」なのか」世話人8名は、日本の市民として、この問題をどう考えるか、2021年3月に共同論文「慰安婦問題の解決に向けてーー私たちはこう考える」を発表しました(本HP掲載)。韓国の市民の中にも、この提起を受けて応答しようという動きがあります。

市民には、こうした問題にかかわるには影響力に限界があり、またただちに解決されるような問題でもありませんが、まずはこの問題にかかわってきた様々な立場の人たちが自由に意見を述べあい、議論しあう「場」が必要だと考えました。今回、声明世話人を主催者として企画し、開催したシンポジウムは、その「場」をつくる試みです。いま何が動いているか、解決のためにこれから何をすべきか、考えていくためのシンポジウムでした。 

 シンポジウムは、「経過報告」とそれぞれの立場からの「発言」の2つに分けて行われました。

 

1.経過報告

経過報告は、共同論文の趣旨、反響、本シンポジウムの目的などを、岡本厚・「世界」元編集長が行い、韓国からは南基正・ソウル大学教授が、韓国側で日本側の提起を受け、どのような議論をしているかを報告しました。

また「那谷屋議員質問主意書」とその回答は何を物語っているかについて、和田春樹・東京大学名誉教授が報告し、最後に内田雅敏・弁護士が、議論の焦点となっている「2015年日韓慰安婦合意」をどう捉えるか、報告しました。

(*報告のレジュメと資料は、別に掲載しています

 

2.発言

 休憩をはさんで、これまで「慰安婦」問題に様々な立場でかかわってきた方たちが発言しました。発言されたのは、以下の方々です。

 李鍾元(早稲田大学教授)、吉川春子(「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナール)、堀山明子(毎日新聞前ソウル支局長)、箱田哲也(朝日新聞論説委員)、花房俊雄(元関釜裁判を支援する会代表)、東郷和彦(静岡県グロ-バル地域センター客員教授、元外交官)、谷野作太郎(元中国大使)、小林久公(過去と現在を考えるネットワーク北海道)、金性済(NCC総幹事)、川上詩朗(弁護士)、大森典子(弁護士)

 

3.  次回のシンポジウムは、より深い「対話」「議論」を

 今回のシンポジウムは、多くの示唆に富む発言をいただきましたが、時間の関係もあり、「対話」「議論」の場にすることは出来ませんでした。

 共同論文を批判する市民運動の声明も出ています(資料参照)。それも大事な声として受け止めつつ、次回のシンポジウムは、より深い「対話」「議論」が出来るように、いま世話人で議論を進めているところです。30年にわたって、様々な試みがなされましたが、残念ながら「解決」にはいたりませんでした。日韓政府間だけでなく、それぞれの市民の間にも多くの葛藤が生じています。それだけ困難な問題であるということですが、なぜそうなっているのか、検証と分析が必要だと考えます。 

 

 なお、本シンポジウムについて、共同通信、しんぶん赤旗、ハンギョレ新聞(Yahooニュースが転載)などが報じています。

 


2021/6/25 慰安婦問題に関する質問主意書に対して、菅内閣は、歴代の談話等を継承すると答弁書

 この6月、菅内閣の慰安婦問題に関わる認識について、重要と思われるやりとりがありました。那谷屋正義議員(立憲民主党)の質問主意書とそれに対する総理の回答です。以下に、質問主意書とそれに対する回答を合わせて掲載し、註を本HP世話人の責任で付しました。


那谷屋正義参議院議員提出「日韓関係を正常な隣国関係にするための過去の努力に関する質問主意書」と菅義偉内閣総理大臣答弁書(2021/6/25)

【那谷屋正義参議院議員提出 質問主意書】

日韓条約の締結以来、五十五年が経過した。日本と韓国は互いに重要な隣国として正常な国家関係を維持し、協力友好を発展させるように、様々な努力を重ねてきた。特に両国関係の過去からくる不幸な歴史の傷跡を克服するために、真剣な努力が払われたことは特筆に値する。二〇一五年(平成二十七年)には慰安婦問題の解決のための新たな政府間合意(二〇一五年合意)が生まれ、新たな努力がはじまった。しかるにこの合意をめぐって新たな反発や失敗がみられ、日韓関係の冷え込みが起こったのは遺憾である。ようやくにして韓国大統領が本年一月の記者会見で二〇一五年合意は「両政府の正式な合意」だと明言されて以来、韓国内の動きも活発になり、相互理解と対話、協力により、事態の打開を進めうる形勢が日韓双方に現れている。韓国の女性団体が問題を提起したのを受け、日本政府と国民がこの問題の解決に取り組みはじめてから、三十年の歳月が流れた。韓国の市民の毎週デモは千五百回目を迎えようとしている。数少なくなった韓国の生存被害者の中には日本になお謝罪を求める声がある。この際、日本の努力の積み重ねを再検証、再確認し、政府のお詫びと反省の真意をはっきりと説明することによって、本当の合意に近づくことが、日韓関係を正常な隣国関係に戻す土台となるものと考える。そのような考えから、以下の質問を行う。

 

------------質問主意書-------------------------------------------

一 一九九三年(平成五年)八月四日、日本政府は国の内外での資料収集調査に基づき獲得した慰安婦問題認識を河野洋平官房長官談話(以下「河野談話」という。)として発表した。河野談話は、軍当局の要請で、慰安所が広範な地域に設営されたことを認め、慰安所の設置と管理、慰安婦の移送に日本軍が直接間接関与し、慰安所の生活は、「強制的な状況の下での痛ましいものであった」と述べた。その上で、次のように謝罪し、約束した。

「本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、・・・いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。」、「われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。」

この河野談話は以後の歴代の内閣において継承されてきた。安倍晋三総理も、二〇一四年(平成二十六年)三月十四日に参議院予算委員会で、河野談話について、「安倍内閣でそれを見直すことは考えていないわけであります」と述べ、菅義偉官房長官が「政府の基本的立場は官房長官談話を継承するということであります」と補足した。菅内閣においても、河野談話を継承しているか否か、明らかにしていただきたい。

 

内閣総理大臣菅義偉 答弁書】 政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話を継承しているというものである。

 

 

------------質問主意書-------------------------------------------

 二 一九九五年(平成七年)八月十五日、戦後五十年に際して、村山富市総理は閣議決定に基づき、総理談話を発表した。この中で、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、・・・疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」と述べている。この内容のうち、植民地支配がもたらした損害と苦痛に対する反省と謝罪は、一九九八年(平成十年)の日韓パートナーシップ宣言に収められ、二〇〇二年(平成十四年)の日朝平壌宣言にも収められた。安倍総理は二〇一三年(平成二十五年)五月十五日、参議院予算委員会で、村山談話を「政権としては全体として受け継いでいく」旨表明した。

菅内閣においても、村山談話を継承しているか否か、明らかにしていただきたい。

 

内閣総理大臣菅義偉 答弁書】

お尋ねについては、政府の立場は、参議院議員山本太郎君提出平成二十七年八月十四日の「内閣総理大臣談話」に関する質問に対する答弁書(平成二十七年十月六日内閣参質一八九第三二五号) 一から三までについてでお答えしたとおりであり、菅内閣においても変わりはない。

(世話人註) 山本議員の質問主意書に対する安倍内閣総理大臣の答弁書には「いずれにせよ、安倍内閣としては、村山談話及び小泉談話について全体として引き継いでいる」と述べられている。

 

 

------------質問主意書-------------------------------------------

三 一九九五年(平成七年)に政府は慰安婦被害者に対してお詫びと償いの事業を実施する財団法人女性のためのアジア平和国民基金(以下「アジア女性基金」という。)を設立し、原文兵衛氏を理事長に据え、フィリピン、韓国、台湾の被害者に事業を開始した。その際、慰安婦被害者のお一人お一人に総理のお詫びの手紙、原文兵衛理事長のお詫びの手紙とともに、償い金二百万円、医療福祉支援として百二十万円ないし三百万円を渡した。償い金は国民からの拠金を財源とし、医療福祉は政府の拠出金によってまかなわれた。総理の手紙には、「私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます。・・・わが国としては、道義的責任を痛感しつつ、・・・過去の歴史を直視し、・・・後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。」と書かれていた。この手紙はフィリピンの被害者二百十一人、韓国の被害者六十人、台湾の被害者十三人に渡されたが、その手紙には橋本龍太郎総理、小渕恵三総理、森喜朗総理、小泉純一郎総理が署名した。

菅内閣においても、アジア女性基金の事業、歴代総理のお詫びの手紙を日本国家の正当な努力であったと評価しているのか否か、明らかにしていただきたい。

 

内閣総理大臣菅義偉 答弁書】

政府としては、御指摘の「女性のためのアジア平和国民基金」の事業に対し、同基金が御指摘の「手紙」を当該事業の対象者に渡すことを含め、最大限の協力を行ってきたと考えている。

 

 

------------質問主意書-------------------------------------------

四 アジア女性基金はフィリピン人とオランダ人の慰安婦被害者の大多数には受け入れられたが、韓国では政府登録の被害者の三分の一以下の人にしか受け入れられなかった。そして、アジア女性基金が解散した後、二〇一一年に韓国憲法裁判所が韓国政府の行動を違憲であると判定した。李明博大統領は日本政府に慰安婦問題解決に一層の措置を求めるようになり、それが二〇一三年からは朴槿恵大統領に受け継がれた。日韓両国の間で深刻な交渉が続いた結果、ついに合意に至り、二〇一五年(平成二十七年)十二月二十八日、岸田外務大臣はソウルの地において尹炳世韓国外務部長官と会談し、合意した内容を共同記者会見の席上、次のように発表した。

「(一) 慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。

(二) 日本政府は、これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。」

菅総理はこの合意をまとめた安倍内閣の官房長官であり、二〇一五年合意の基本的内容を継承しているのは当然であると考えるが、改めて伺いたい。菅内閣としても、二〇一五年合意の際に岸田外務大臣が発表した立場、特に、前述の(一)と(二)の内容を継承しているのか、否か、明らかにしていただきたい。

 

内閣総理大臣菅義偉 答弁書】

平成二十七年十二月二十八日の日韓外相会談で確認された慰安婦問題に関する合意については、同会談で岸田外務大臣(当時)が尹炳世韓国外交部長官(当時)と協議を行い、韓国政府としての同合意に対する確約を直接取り付けたものであり、また、同長官(当時)は、同会談後の共同記者発表の場で、同合意を日韓両国民の前で、国際社会に対して明言した。さらに、同合意は、同日の日韓首脳電話会談でも確認された。同合意においては、慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決されること」が確認されている。同合意の内容は、同共同記者発表の場で発表したとおりであり、政府としては、同合意が着実に実施されることが重要と考えている。

 

 

------------質問主意書-------------------------------------------

五 韓国では朴槿恵大統領が和解治癒財団を設立し、日本政府が閣議決定して、送った十億円を受け取り、生存被害者に一億ウォン(約一千万円)、被害者遺族に二千万ウォン(約二百万円)を支給した。その支給にあたり、二〇一五年合意の際に岸田外務大臣が表明した日本政府の立場、特に、前記四の(一)の内容を安倍総理の手紙にして与えてほしい、それを、被害者、その遺族に渡したいという希望が和解治癒財団から出されたが、日本政府はなぜかその要請に応じなかった。当時四十七人生存していた慰安婦被害者は現在十人程度しか元気でおられない。

菅総理としては、「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。私は、日本国の総理大臣として、改めて慰安婦として、数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からのお詫びと反省の気持ちを表明する」というような手紙にご自身の署名を添えて、駐韓日本大使をして現在お元気でおられる慰安婦被害者のもとに届けさせるお考えはないか、お伺いしたい。

 

内閣総理大臣菅義偉 答弁書】 回答なし

 

 

------------質問主意書-------------------------------------------

六 文在寅大統領の政府は、二〇一八年十一月二十一日、和解治癒財団の解散を進めると発表したが、財団が残した残余金は約五十七億八千万ウォン(約五億七千八百万円)であり、韓国政府が支出した百三億ウォン(約十億円)と合わせて使途を考え、日本から送られた十億円の残余金のうち、約五億七千八百万円については日本と協議するという方針が明らかにされた。韓国政府部内、周辺には、残った十五億円すべてを投じて慰安婦問題についての研究所を韓国政府が設立、運営し、日本政府に協力を要請するという構想もあると言われている。

菅内閣においては、日本が慰安婦の名誉回復、心身の傷の治癒のために送った十億円の残りを韓国政府の慰安婦問題研究所の設置のために使うという案をどのように考えるか、お伺いしたい。

 

内閣総理大臣菅義偉 答弁書】回答なし

 

 

----------------以上------------------------------------

 


2021/5/24 菅内閣の強制連行・強制労働に関する4・27国会答弁の撤回を求める声明

菅内閣の強制連行・強制労働に関する4・27国会答弁に対して、「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」が次の声明を発表しました。資料ページ掲載しています。

 




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